最後の賭け

平田 俊憂希(インストラクター S32・1・9生)

 今、アメリカを語ろうとしています。 しかしどこから語っても、すごく長い話しになってしまいそうです。

 私は、95年11月初旬に日本を発ち、ここアメリカのフロリダ州オーランドまでやってきました。 自分自身への最後の賭けというのでしょうか?

 毎年プロテストに挑みながらそのプレッシャーに耐え切れずいつも自分の実力を出せないまま、苦汁を飲み続けました。(持論、技術も未熟だったのですが) 私がスイングをチェックしレッスンしていた20才の若者は、何の恐れも感じないまま、初めてのプロテストで合格していきました。

 年齢が高くなるにつれ受けるプレッシャーも、慣れるどころか大きくなってきます。 ですからテストに受かるだけの実力では、到底クリアー出来ません。 けた外れの実力を身につける為、私は渡米を選びました。

 大東氏の語る日本とアメリカの実力の違いは、ミニツアーレポートを読んでわかっていたつもりですが、自分でミニツアーに参戦してそのけたはずれのアンダーパー(63・64・65)に、本当にこれがミニツアーの選手が出したスコアーだろうかと目を疑いました。 そしてそのアンダーパーは、フロリダ特有の強風(THE OPEN 並です)と、バミューダ、ライグラスというとてつもなく粘りのある厄介な芝と、長くそして全ての種類のショットを要求されるタフなコースでの中だという事を付け加えておきます。 

 この文章の執筆をしている前週まで先ほど述べた信楽CCの新鋭、土山陽源プロと、今年は開幕の東建コーポレーション・トーナメントから、ツアーに参戦する西野琢仁プロが2ヵ月弱このトミー・アーマー・ツアーに参戦していました。 本人達の名誉のため、不本意な成績は伏せるのが筋かも知れませんが、あえて日米の実力の違いを知ってもらいたいので、ここに記載します。

 土山プロ 15試合に参戦 内1試合で賞金を獲得($95) 平均ストローク 80

 西野プロ 10試合に参戦 内2試合で賞金を獲得($1060)平均ストローク 76

 西野プロは、現在関西の若手ではのりにのっている強いプロの一人です。(93年京滋オープン優勝) その彼をもってしてっも、この成績です。 いかにこのトミー・アマー・ツアーとアメリカのコースがタフであるか、ここに証明しています。(ちなみにヨネックスの米倉プロも参戦していましたが、賞金を獲得出来なかったようです。) 西野プロは来年オフに必ずもう一度挑戦しに帰ってくると熱く語っていました。

 では、なぜこれ程までにも日米の差がついてしまうのでしょうか。 それは大東氏が語り尽くしていますが付け加えると、アメリカはPGAの選手もナイキツアー、ミニツアーの選手も同じ土俵の上で同じレベルの練習をし、試合をしているとのことです。 日本の場合は先のとがったピラミッド型で、ツアーの選手は良い環境で練習し試合も出来ますが、試合に出れない選手は、試合経験どころか練習さえもままならないのが現状です。

 アメリカではミニツアーといえども、ハイレベルの戦いです。 いつ上に行けてもよい選手がゴロゴロしています。(今週行われたホンダクラッシクの優勝者TIM HERRONも2年前まではミニツアーの選手で、1回しかミニツアーで勝っていません。) 逆に上の選手もうかうかしていては、いつでも足元をすくわれます。 この弱肉強食が、若者達に夢を与え、また夢を奪うのです。 日本の研修生やプロ達は見果てぬ幻をだらだらと追っているにすぎないのかもしれません。 力の無い者は、違う道を選ぶべきなのです。 ですからアメリカの若者はやるだけやったら、自分の進む道を変えて行きます。(クラブプロやインストラクター等) 中途半端な立場で夢を叶える事は到底出来ない事を、彼等は知っているのです。

 ちなみに私は現在39才、アメリカではとっくに終わっています。 しかしこちらに来て4ヵ月、私のゴルフ人生の中で最大の急加速が始まっています。 練習場での研修生しか経験の無い私は、ゴルフを始めてから10年になりますが、500ラウンド程度しかコースに出ていません。 アメリカに来てからの4ヵ月で、すでに150ラウンド以上をこなしています。 すでに日本にいる時の2年間以上に相当します。(夏場には一日3〜4ラウンド出来るらしいのでもっと増えるでしょう。)

 自分でも信じられない程の急速な上達が、今始まっています。

 大東氏の力説する「アメリカの1年は日本の5年にも匹敵する」という言葉が今身をもって知らされています。

 日本のプロテストをどうしてもうかりたくてこちらに来たのですが、今はもうその夢は消えました。 今の私の夢は今年のクオリファイズで上位に入ることです。 とてつもなく大きな夢にふくれ上がってしまったのですが、それをさせてしまうのがアメリカなのです。 しかし日本のプロテストのけじめ(?)も来年つけに帰るつもりです。

 最後に私のこれまでの成績を少し自慢を入れて記載させていただきます。 今日までに20試合に参戦し6試合で賞金を獲得。 平均ストローク73、最高プレースは2位です。 5位までに入れば、翌日の新聞に名前が載るので、あこがれのプレースでした。 この成績は自分でいうのもおかしいですが本当に良くやっていると思います。 でもまだまだ伸びる予感があります。 このアメリカの大地は、何でもかんでも大きく成長させるようです。 39才のこの私でさえ急激に成長させてくれました。 今後の目標は、まず1つ勝つ事、そしてクオリファイズで上位に入りナイキツアーにでることです。(これはかなり難しいのですが)

 私の4年間所属していた関西ゴルフ練習場連盟の皆さん、「また平田がなまえきな事を言い出した。」と思うなら、いつでもかかってきなさい。 こてんぱんにして帰してあげるから!(これは冗談ですが)

 でもプロゴルファーを目指しているなら、1度はアメリカの大地を踏んでみて下さい。

 待ってます。

 最後に、大東氏に。 このアメリカ(トミー・アーマー・ツアー)を与えてくれて、本当にありがとう。 これからも1人でも多くの若者に夢を与え続けて下さい。 

 

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