安井 良次のメンタルトレーニング

第1回〜第10回

第10回 連載  2004/7/26

安井良次のメンタルトレーニング

Iスタート前の不安

ゴルフのプレーはスタート前から始まっています。ひょっとしたら前日、いや数日前から始まっているかもしれません。例えば、当日の天気を心配したり、その為にレインウエアーを準備したりします。前日に打ちっ放し練習場に行って不安を解消しようとしたり、朝は早く眼が覚め、二度寝できなくて寝不足感が残ったりします。

いずれにしても、ゴルフプレーの結果を考え「不安」や「期待」が混在している筈なのです。そのゴルフは会社のコンペであるかもしれませんし、友達や上司とのゴルフかもしれません。勝負の結果「お小遣い」を巻き上げられる可能性もあります。成績が良ければ「良い景品」を獲得できるかも知れないのです。

プレーする前からドキドキハラハラが積み重なって、一番のティーグランドでは最高潮に達しているかも知れません。しかし,余りテンションが上がったり、プレッシャーが掛っては自分のゴルフができないのです。さて、そこでプレー前の心の持ち方について助言をしておくことにしましょう。

原因

ゴルフというゲームは闘いであり闘うスポーツなのです。それだけに興奮もするし緊張も強いられ、不安や恐れを感じてしまうものなのです。

また、ゴルフというスポーツはスタートの日時は決められています。その時間まで待たねばなりません。待っている間、空想や想像やイメージが働いてしまうのです。

プレーする日の一番ティーショットを打ち終えるまで「頭や心の中」で想像しているだけなのです。それが全てスタート前の不安として出てくるのです。余り過剰な精神負担になってしまったら、多分、良い結果が得られないと思いますがどうでしょうか?

対策

対策として「何も考えるな」と言ってしまえばそれで終わりです。しかし、そんなに簡単に「考えない」で居られる訳が無い筈です。パットのストロークを練習してみたり、素振りでスイングイメージを作ったりするものです。どうぞ、自由にイメージや想像を働かせて仮想ゴルフをすれば良いのです。ただ、ここで考えて頂きたいことは、「結果」について「心配」することは止めなさいということなのです。プレーもしていないのに「結果」を考えて「悪い場合」を想像して、自分にプレッシャーを掛けることは「全く無意味」であることに気付いて欲しいのです。

無意味な想像は「100害あって一利なし」であります。

第9回 連載  2004/7/12

安井良次のメンタルトレーニング

H朝の練習場「私は練習嫌い」

あなたはゴルフ場に「スタートの何分前」に到着するようにしていますか?通常は一時間前ぐらいには到着して、コーヒーの一杯も飲んで、軽く練習場で球を打ち身体をほぐしてスタートというのが普通かも知れません。所が、全く練習もせずに素振りを2〜3回してスタートする人もいます。ぎっくり腰や関節痛にならないか心配してしまうのですが、そうした方は「朝,練習するとスコアーが良くないんだ!」等と縁起を担いでいるひとも多いようです。確かに、アマチュアの場合、朝の練習がその日のゴルフに「悪影響」を与えていることもあるようです。例えば、練習場でのショットがイマイチよくなかった場合などがそうです。練習場でトップしたりスライスボールが出たりしていると、いざ本番で「ひよっとしたら同じような失敗をするのでは」等と考えてしまうのです。

まさにメンタルのなせる所ではないでしょうか?

原因

朝の練習の良い悪しが、その日のスコアーに大きく影響があるように思うのが普通かもしれません。ドライバーを打ったらスライスするし、アイアンで打てばトップやザックリ、パットを打てば狙い通りに打てない。これで今日のスコアーが良いはずがないと思うのが当然かもしれません。ではどうすれば良いのでしょうか?

対策

何事も考えようです。練習場で良い球を打てないのは当たり前です。寝起きの朝一番から良い球など打てる訳がないのです。身体をほぐす、スイングの感を取り戻す、スイングに入るルーティーンを確認する。などやるべきことは多い筈です。その他アプローチやパットの感触も確認する必要があるのです。あくまで身体の動きを確認するための「朝の練習」と捉えておれば「悪い印象」を残したままスタートしなくて済む筈です。自分からマイナス思考になるのは最悪です。常に、思考はポジティブに、イメージは良くしてショットに入る習慣を付けることです。

第8回 連載  2004/6/28

安井良次のメンタルトレーニング

G「何故、OBを心配すると何時も通りのスイングができないの?」

このケースも良くあることです。右にOBがあるとか、左にOBがあるとかを意識するとてきめんにスイングを崩してしまうことがあります。「腰の回転が止まった」とか「ぎこちないスイングをした」とか言われます。これもまさしくメンタルが影響しているのです。

原因

1、まさに「恐れ」なのです。OBすることが怖い、OBしたらどうしよう、と思うから身体や腕が動かなくなるのです。

2、OBを避けようとして、身体が本能的に守りに入り、危険な方に行かないような動きをして防御するのです。しかし、それが悪い結果につながってしまいます。

3、いずれにしても、視覚や潜在意識から危険信号が出て、自分が平素しているスイングに悪影響を及ぼしていることは確かなことです。

対策

1、OBの白杭が視覚に入ったり意識することによって、その白杭が「目標」になってしまうことがあります。「真の目標」を改めて自覚し直すことも一つの方法です。

2、「真の目標」を設定し直したら、自分の「ルーティーンワーク」に徹して、目標に対して正しいアドレスを心掛けスイングに徹することです。(ターゲットISスイングについてはいずれ解説します)

3、実はこれが最も大切なのです。それは「覚悟の心」です。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあり」とも表現できます。目標が決まれば先の心配はしても仕方がないのです。将来の心配はその時にすれば良いのです。「今、すべき事をする」過去も未来も今は関係がない。そうした「覚悟の心」を持つことが出来れば如何なる状況も克服できます。

第7回 連載  2004/6/14

安井良次のメンタルトレーニング

F「何故、急にアドレスで悪い予感に襲われるの?」

アドレスに入った時、今まで何も感じていなかったにもかかわらず、突然、違和感を感じることがあります。結構頻度多く起こるものです。例えば「スライスしそうな気がする」「ダフりそうな気がする」等です。当然ですが、何の対策も行わないでそのまま打ったとしたら「その通りの結果」か「全く反対の結果」に終わることは、大抵のゴルファーは知っている筈です。

では、何故、このような事が起こるのでしょうか?原因を探ってみることにします。

原因

1、ゴルフとは「悪い潜在意識」との闘いです。アドレスをすると同時にその「悪い潜在意識」が露出してきたのです。過去、その場に類似した状況でのミスを思い出したことで起こっています。

2、意識は肉体と連動していると思われます。手や腕などに「悪い感覚」が蘇ってきていることもあります。

3、ゴルフとは考える時間の多いゲームです。待ち時間やアドレスに入ってからの「スイングチェック」をしている内に、余分な思考や潜在意識が脳裏に出てくるのです。時間がスイングを阻害しているということです。

対策

では、対策について考えてみることにします。

1、自分の「ルーティーン」に徹底することです。ボールに近づき、距離の判断、クラブ選択、アドレス、スイングしてフィニッシュまで、自分の手順を着実に踏むことで不要な思考や感情を入り込めなくすることです。

2、「無心になれ」と良く言われますが、それはかなり難しいことです。無心になる為の不毛な努力をするより、積極的に「一つのことを考える」ことで「無心に近い状態」をつくることが出来ます。試してください。

 

第6回 連載  2004/5/31

安井良次のメンタルトレーニング

E「何故、朝1番ホール、ティーショットで緊張するの?」

先ず、誰もが緊張する「朝1ショット」について考えることにしましょう。

プロであれアマチュアであっても、朝1番のショットは緊張するものです。最も大きな原因は「不安」である筈です。どのような「不安」が緊張の原因なのでしょうか?

原因

1、先ず、時間の経過が緊張を重ねています。ゴルフの予定は少なくとも数日前から決まっているものです。日が迫るに連れて緊張感と共に不安感は重くなってきます。

2、朝の練習をして、全てのショットが完璧でないはずです。旨く出来ない要素があれば、それが「不安」の原因になります。

3、事前に組合せが分っていても、同伴者に「特に旨い人」「好きでない人」「ルーズな人」など「同伴者として不適な人」が入っていたとしたら、それも「不安」材料になります。

4、重要な試合であれば「良いスコアー」が出るかどうかが心配です。それも「不安」のひとつになります。

5、1番ティーグランドでは同伴者以外の局外者が見ていることが多いのです。同伴者は同じ緊張状態である訳ですが、局外者は違った雰囲気があります。見られていることで「余計な意識」を持ってしまうことが「不安」を誘導するものです。

6、1番のショットがその日の成否を握っていると思っている人が多い筈です。失敗したくない、失敗したらどうしよう、が脳裏を支配して不安になっているのです。

大体、以上のような事が原因で「不安」が増幅してきているのです。

対策

ここで、「対策」が必要になってくるのです。それぞれについて「対策」を解説しますが「そんな簡単な事で対策になるの?」と思われることもある筈です。しかし、対策は簡単な程良いのです。複雑な事など実行出来ないからです。

1、何が不安の原因なのかを具体化してください。今、心配しても仕方がないことを心配していることに気付く筈です。

2、朝の練習は身体慣らしです。コースに出れば本来の自分が出ると考えることです。

3、他人の事を気にしても無駄です。他人が自分のゴルフをする訳ではないのですから。

4、冷静で闘争心があることが重要なのです。結果(先の事)を心配しても無駄なのです。

5、誰が見ていようが、自分のスイングをすることしかすべき事はありません。ベストスイングすることだけを意識することです。

6、1番ホールの結果が18ホールの結果ではありません。勇気と決断と闘争心があるかないかかが重要なのです。「覚悟」の気持ちでスイングだけを心掛けてください。

第5回 連載  2004/5/17

安井良次のメンタルトレーニング

D「アナログとデジタル論」

基礎編はこれで終わりです。今後は、ゴルフのラウンドで起こる様々な「現象をテーマ」にして、何故その現象が起こるのか?という「原因の追求」をすることと、その「対策をどうするのか?」について解説するつもりです。

さて、今回のタイトルを「アナログとデジタル論」と書きましたが、ゴルフ解説では聞きなれない言葉だと思われている筈です。これを簡単に説明しますと、「動かないゴルフコース」と「人間という感情を持つ動物」との闘いのスポーツだということです。ゴルフ場はプレーする人間に攻撃してくることはありません。人間が一方的に攻めてゆくゲームなのです。相手はただ静かに待っているだけで、勝手にミスをして罠にはまり悪戦苦闘してしまうのです。自然条件が加味されるとしても、原則は「デジタルなコース」に「アナログな人間」が攻撃するゲームであると言いたい訳です。まさに人間の「一人相撲」だと言えます。狙うべきポイントを予め決められたコースをアナログ人間が攻撃して、自分のミスが原因で「仕掛けられた罠」に嵌り、一喜一憂し、不安や恐れや欲に翻弄されながら18ホールを回るのです。まさに、我々人間の持っている自分の「エゴ」や「喜怒哀楽」との闘いであり、コースとの闘いではないのかも知れないのです。

そういうことであれば、プレーをする我々こそ「アナログ人間」から「デジタル人間」へ発想を転換することが必要なのです。より「マシーン化」することでやっと「デジタルなゴルフ場」に対抗できるということです。「アナログ感情」を剥き出しにしていてはコースに勝てないということなのです。

「デジタルゴルフ」を言葉で表現するとすれば、コースでの11打について、人間の持っている「エゴ(不安、恐れ、欲、期待)」を出す事なく、自己判断で決めた目標に向けて、自分の実力に見合った能力で「マシーン的」に攻めることができれば適当であるということです。言うは易し行うは難しいのでありますが、そのことを心掛けることによって新しい発見があると確約するところです。

スポーツというのは本来、闘う相手がいることが普通であります。ボクシング・野球・剣道・サッカー・テニスなど全て相手がいます。闘う相手がいないスポーツと言えば、ゴルフ・マラソン・体操などがありますが、闘う相手のいないスポーツは総体的に「メンタル性」の強いものであると言えるかも知れないのです。

「デジタルとアナログ」という特異な表現を使ってみましたが、このような表現で解説することで読者の皆様に旨く理解頂ければ幸いだと思うところです。

第4回 連載  2004/5/3

安井良次のメンタルトレーニング

C「6つの特性No,2」

前項では、自分の特性を知っていただくことをお勧めしました。本項では6つの特性がそれぞれゴルフにどのような影響を与えるかを解説することにします。

6つの特性とは「決断力」「ポジティブ度」「イメージ力」「自信度」「集中力」「心の安定度」であります。順次解説しますが、解説のポイントは各能力について「弱い」場合、どのような現象が現われるかであります。

先ず「決断力」でありますが、「決断力」の弱い人は意思決定がしにくい人であります。ゴルフは全てのショット毎に決断が必要なのですが、決断をしないまま曖昧にショットをしてしまいがちになります。中途半端な気持ちであるとしたら良いショットを期待することができません。

次に「ポジティブ度」についてでありますが、ポジティブ度の低い人は、常に「ネガティブ思考」の襲われ、不安や恐れを感じながらプレーすることの多い人です。当然、不安や恐れはゴルフの最大の敵です。その為の対策をしっかり持っておく必要があります。今後、このホームページの内容から解決策を見つけていただきたいのです。

次は「イメージ力」です。イメージ力の低い人はスイングやコース攻略のイメージを持たずにラウンドする傾向の人です。良い時のスイングをイメージとして残せないし、次のショットに生かせない人です。

「自信度」の低い人は、技術不安やミスを恐れながらラウンドすることが多い人です。練習を積んで不安を解消しても、叉別の不安を自分から探してしまう傾向等もあります。

「集中力」の低い人は、自分が今しなければならないことに集中出来ず、プレー以外のことを考えてしまったり、結果ばかりに気持ちが行ってしまいます。また、同伴者の言動を気にするあまり自分のリズムを崩してしまうことなどもあります。

最後に「心の安定度」の低い人についてでありますが、感情の起伏が激しい人だと言えます。コースで起こるあらゆることに過敏に反応してしまうことがあります。どうしようもない事に怒りを覚え、感情をコントロールすることが下手な人です。

以上「6つの特性」について、その能力が弱いないしは低い人について、その傾向について述べてみました。自分がいずれの能力に欠けているのか、また、どれが優れているのかを「他人に聞いて」判断してみてください。そして、低いと判断される部分については上記のポイントに注意するだけでも効果が期待できます。

いずれにしても、ゴルフのラウンドに5時間掛るとしても、実際にスイングしたり、決断するため考えている時間はせいぜい20分ぐらいなのです。その時だけ、良いゴルフをする為のメンタル状態にコントロールすることは不可能ではない筈です。1ショットに掛る時間はわずか1〜2分なのです。自分の長所や短所を自覚し、長所は活かし、短所は旨くコントロールすることが大切だということです。

第3回 連載  2004/4/19

安井良次のメンタルトレーニング

B基礎編「6つの特性」No,1

基礎編の3項目目になりますが、まだ「基礎知識」の段階です。今回のBとCDで基礎知識編は終了です。それから「実戦的メンタルトレーニング」が始まりますので、今は取りあえず基礎を学んでください。

人間には個性があります。ゴルフをする時必ず個性がでます。個性が出る事が良いのか悪いのかは結果を見てどうであったかで判断できるのですが、それだけで割り切るのも納得できない部分もあります。しかし、見方によると「個性がゴルフをしている」と言われても仕方がない程個性でゴルフをしている人もいます。しかし、個性と言っても一言で表現できるほど単純なものでもない筈です。その人のいろいろな特性が絡み合って一人の個性が形成されているのです。ゴルフというスポーツをする上で必要な特性とは何なのでしょうか?

私達は6つの特性に分けてみました。先ず「自信度」があります。自信の有る無しが大きく影響する事は確かです。次に「ポジティブ度」というのがあります。考え方や攻略方法などが「ポジティブ」でないと駄目だと言います。また、「イメージ力」も必要とされます。良いイメージを持つことが出来れば良いゴルフプレーにつながるものです。「決断力」も必要です。ワンショット毎に決断しなければならないのもゴルフの特徴です。これで4つ、後2つですが、「集中力」と「心の安定度」であります。集中力もゴルフには不可欠でありますし、冷静な心、安定した心も必ず必要とされます。これら6つの特性こそゴルフに必要なものであり、メンタルトレーニングを実践するにあたり各自が自覚しなければならない必要条件なのです。そこで、読者の皆様は自分の特性を自己判断してみて、上記6つの特性のいずれが強くてどれが弱いかを自覚出来ていますか?

パソコンで「特性判断」をするシステムもありますが、それをこの「ホームページ」で対応出来るようにするかどうかは今後の課題として、一人一人の特性こそメンタルトレーニングの要であります。自分の特性を知ることで対策をより効果的になります。そこで手短に自分の特性を知る方法を伝授しますと、平素、ゴルフをしている仲間(友人)に判断してもらうことが早道です。先に述べた「自信度」「ポジティブ度」「イメージ力」「決断力」「集中力」「心の安定度」について、5点満点で何点と思いますか?と数人に問い掛けてみて下さい。他人から見た印象や分析は意外と正しいものです。

そこで、「他人から見た自分」の特徴を知ることが出来るのです。良い所悪い所を自覚してください。メンタルトレーニングの基本は「自分を知る」ことから始まります。良い所を活かし,悪い所を旨くコントロールするのがトレーニングであります。

意外と「自分が考えている自分像」と「他人から見た自分像」が違っていることが多いものです。他人からの評価を素直に受け入れ、その事を自覚していただくことが重要です。そこで、次回では「6つの特性、No,2」として、それぞれの特性について注意しなければならないポイントについて解説することに致します。

第2回 連載  2004/4/5

安井良次のメンタルトレーニング

基礎編A「潜在意識」

今回は基礎編Aとして「潜在意識」について解説します。ゴルフと潜在意識とは大変密接な関係にあります。特に「潜在意識」は「メンタル」に大きく影響を与えます。その事を理解して読んで頂きたいのです。

人間の身体は潜在意識が動かしていると言っても過言ではありません。辞書には「潜在意識とは無意識の内に行動を支配する意識にのぼらない自我の活動」と書かれています。すなわち、我々の内臓は意識しないで動いています。危険を察知したら避けようとします。ゴルフでは、スイングしようとして動きを開始すると勝手にスイングしているものです。意識して腕や腰や肩を動かしている訳ではありません。スイング中に何か異変を感じたらそれを回避しようとする動きが入ることもあります。スイングに不安を感じたり、過去のミスやら失敗ショットを覚えているのも潜在意識です。決断に迷ったり、集中力を乱したりするのも潜在意識のなせる技なのです。

ゴルフの世界だけに限って考えれば、潜在意識とはプレーに「良い影響」より「悪影響」を与えていることのほうがはるかに多いと言えます。良い潜在意識がプレーに好影響を与えられたという体験を思い出せないからです。ただ、潜在意識は「実際の体験」と「仮想(イメージで作った)体験」とを区別できないという特徴があることを覚えておいて欲しいのです。今後の解説の中で「この特徴」を利用してメンタルコントロールする場面があるからです。

では、その潜在意識の正体とは何なのでしょうか?我々ゴルファーにとって、ある意味で「悩みの種」とも言うべき潜在意識のことです。人間には108つの煩悩があると言います。それは「喜怒哀楽」とか「エゴ(欲、期待等)」であります。ゴルフとはそうした物との闘いであると理解すれば納得できるかもしれないのです。我々がゴルフをプレーする中で様々な精神的な葛藤があります。例えば、OBだけはしたくないという「恐れ」、OBするのではないかという「不安」、このパットが入ってくれれば良いのにという「期待」と「欲」、旨く打てる筈がないという「自信の欠如」、俺はなんて下手なんだという「自己批判」、絶対そうするんだという「完全主義」等の本能が内在しているのです。そうした人間の本質的な感情に、過去の「悪い体験」が記憶として残留しているのです。例えば、初めてゴルフをする人には「欲」も「期待」も「恐れ」もないはずです。体験を積むことでそうした感情が芽生えてくるということです。即ち、ゴルフのメンタルトレーニングとは、自分の心の中にある「悪い潜在意識」とどう闘うかであり、どうコントロールするかが決め手であります。

人間には性格や特性というものがあります。人それぞれ違った性格を備えているのです。ゴルフをする時、その人の持っている性格が決断することになります。平常心であれば冷静に判断できることでも、そうでない場合にはとんでもない行動に出てしまうこともあるのです。自分の特性を如何に有効活用するかが大切であります。それには自分の性格や特性を認識することから始めなければならないということです。

今後、メンタルトレーニングについて解説を続けていくのですが、その内容は「潜在意識」と闘う方法であったり、コントロールする方法であったり、旨く利用する方法を解説することに尽きます。しかしながら、人間の感情は時と場合によって刻々と変化するものです。その感情と潜在意識が絡み合い、その日の体調や自然条件が重なってさらに複雑になってしまうのがゴルフです。永遠に解決できない課題かも知れませんが、何も対策を図らないでゴルフに挑むとすれば無謀と言えるかも知れません。

第1回 連載  2004/3/22

安井良次のメンタルトレーニング 

@基礎編「右脳・左脳」

はじめまして、私は安井良次と申します。

今回から『大東将啓の「ゴルフホームドクター」制度』でメンタルトレーニング部門を担当させて頂くことになりました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

さて、この原稿が第1回の出稿ということになりますが、何から書き出すべきか大変難しいところです。しかしながら、メンタルトレーニングを解説するにあたり、先ず「誰に向かって解説するのか?」という前提を示しておく必要があると考えております。読者の中には「メンタルに詳しい方」もおられれば「全く考えたこともない人」もおられる筈です。また、ゴルフの技術レベル・過去の体験も人によって様々です。そうした人を全て同じ枠でとらえ解説することには無理があります。そこで、私の解説の基本方針というものを幾つか示しておきたいと思います。

まず、平易で易しい文章を心がける事、次に、平素からメンタルトレーニングには関心を持っていたが今まで学んだことがない人、今後は技術面だけでなくメンタル面の向上を目指したい、そうすることが技術面にも好影響を与えると思っている人を対象にしたいのです。メンタルの初心者にも理解できて「明日からでも現場で実践できる」内容であることを心掛けてまいりたいと思うところです。

前置きが長くなりましたが、初回ということでお許し頂ければ幸いであります。同時に、メンタルを学ぼうとするとき、必ず基礎的な知識を知っていただく必要があることも理解頂きたいのです。今回の基礎解説は「右脳と左脳」の関係であります。

人間には「右脳型人間」と「左脳型人間」とがいるそうです。右脳型人間は感性が豊でイメージや感覚・直感が先行するタイプの人です。例えば、ショットをしようとする時「こういうイメージのボールを打とう」とか、目を閉じれば「自分のスイングする像をイメージできる」とか、パットラインを読む時「ボールが転がる様を想像できる」ような人です。こうして書けば良い事ばかりに思えるのですが必ずしもそうではありません。感性主導型ですから細かいことにこだわりません。その為に、ミスショットの原因が分らないとか、ショットをするときに集中力が散漫になったりとか、トラブルが発生すると憤りが大きくて全てのリズムを崩してしまうようなことが多いのです。

では「左脳型人間」はどうなのでしょうか?左脳主導の人は計数的で分析的な人です。筆者などは典型的な左脳人間です。人の心理を分析したり、それを記録して文章にしているのですからまさにそうです。こういう人は、自分のスイングを徹底して追及します。肩は90度回して、腰は45度、腕はここに上げてダウンはこの角度から降ろすんだ。などと考え記録にも残すような人です。さらに、コースマネージメントを考えることも好きで、ゴルフ理論を語らせれば止まることを知らないという人でもあります。こうした人は全て理論的でないと納得しません。自分のミスの原因を追求することに精力を使い過ぎたり、計画通りにラウンド出来なかった時、感情のコントロールがきかなくなったりして大叩きすることもあります。同伴競技者のリズムと自分のリズムが合わない場合など大変気にするタイプかも知れません。

先ず、メンタルを学ぼうとする場合、自分はどちらのタイプであるかを認識しておく必要があるということです。両者の長所欠点を理解しておき良いところは有効活用するべきですし、悪いところはなるべく出さないようにコントロールする必要があるのです。それを知ることから「メンタルトレーニング」が始まります。さて、あなたはどちらのタイプですか?