読売新聞連載「tee
あんど
tea」大東将啓
日本人4選手 活躍期待
タイガー・ウッズのメジャー4連勝で幕を閉じた昨年のマスターズからはや1年。今年も11日からゴルフの祭典が、ジョージア州のオーガスタナショナルで開催される。今年は「球聖」と呼ばれたマスターズ生みの親、ボビー・ジョーンズの生誕100年にあたる。1930年、28歳で全英オープン、全英アマ、全米オープン、全米アマのグランドスラムを達成して、その年に引退したジョーンズが1934年に名選手ばかりを集めた大会を開催したのが、マスターズの始まり。
今年が66回大会で歴史としては全英オープンの半分であるが、毎年オーガスタで開催されるマスターズは、特別の雰囲気がある。
じゅうたんを敷き詰めたような緑の芝生。パトロンと呼ばれるゴルフを熟知した観客。そんな中で選手らもマスターズに、特別の思いを持つのであろう。
日本からは過去最多の4人が出場する。昨年の大会で4位の大健闘の伊沢利光。昨年の全米プロ4位入賞で出場権を獲得した片山晋呉。世界ランキング50位以内で初出場の谷口徹に加え、5年連続出場の丸山茂樹。何かをやってくれそうなカルテットで、テレビ観戦が楽しみだ。
2002年(平成14年)4月9日(火曜日)
コンプレックスをバネに
私は、高校を卒業するまで赤面症で対人恐怖症であった。コンプレックスの塊だった自分が変わり始めたのは、「もう一人の自分」がいたから。
「無理をしてでも人前に出て自分を出そう」と、ことあるごとに自分の背中を押し続けた。今では人前で話すことに快感を感じている。おかしなものだ。先日も名古屋で100人以上のゴルフインストラクターの前で講演をした。2時間の間に誰一人として居眠りをすることなく、みんなが真剣に変わっていくのを感じた。「私も変われるかもしれない」。そう思ってもらえれば最高だ。
だって、インストラクターのほとんどの人が、コンプレックスを抱えている。プロゴルファーを目指しながら、それが出来ずに生活の手段として、レッスンをしている場合が多い。自分の中に燻るものが少なからずある。プロゴルファーに技術で劣るという引け目もあるだろう。しかしである。それらがバネとなり発奮できればしめたもの。ゴルフの腕は二の次でも、教え上手のインストラクターが多いのはそのためだと思う。
私の体験を紹介することにより、導火線に火が付いてくれることを願った。熱い思いのインストラクターがゴルファーの悩みを解決してくれるだろう。
2002年(平成14年)4月9日(火曜日)
スコア離れ楽しさ追求
「あなたのハンディキャップ(HC)は?」聞かれ、答えることが出来るゴルファーは何人いるだろう。まず、正式なHCを持っている人は、ゴルファー全体の2割も満たない。
しかし、この数字が、ゴルフの世界で意外と幅を利かせている。「研修会に入会できるのは、HC12からの人だけ」というゴルフ場も多い。また、バックティー利用は、4人の合計HCが40までという制限を設けているところも少なくない。HCの少ないゴルファーが偉いように思われるのも日本のゴルフ界の特徴だ。武道の段位のような感じさえある。
スコアから離れてゴルフの楽しさを追及してみてはどうだろうか。ゴルフをしんから楽しむために、ハッピーゴルファー指数なるものを考案した。それは▽フルスイング▽ショートゲーム▽メンタル面▽フィジカル面▽コースマネジメント▽各人の楽しみ───の六つの数値化してみるのだ。60点満点で点数が高くなればなるほど、ゴルフの楽しみ方も増えてくる。スコア至上主義のハンディキャップから逃れて、ハッピーゴルファーになることが出来るかもしれない。
2002年(平成14年)3月12日(火曜日)
冬のプレーに秘策あり
冬のゴルフはなかなか難しい。思うように体が動かない。敏感な手先の感覚が出ないし、寒さのために飛距離も落ちる。
こんな時にこそ、ライバルに差をつけることが出来る対策が幾つかある。まずゴルフボールを、前夜から温めておくのだ。ラウンド中もポケットにカイロと一緒にしておくと、効果抜群。ボールの飛びが違うのでお試しあれ。
次に、ショット以外の時は両手に手袋をしておく。手先の感覚がショットに占める重要度は高い。パッティングやショートゲームの微妙なタッチが出るようにしておくことだ。少し大きめの手袋で、使い捨てカイロを入れれば良い。パートナーが両手をポケットに突っ込んで寒そうにしているのを尻目に、気持ちの余裕まで出てくるから不思議だ。
最後に十分なストレッチと運動をラウンド前に行い、体が動く状態にしておこう。何枚も重ね着した服装に加えて、寒さで体も硬くなり、バックスイングで肩が十分に回らない場合が多い。これが、ミスショットの原因。早めにゴルフ場に行き、練習場でストレッチと打球練習をしよう。
冬場こそ、パートナーに差をつける絶好のチャンスなのだ。
2002年(平成14年)2月26日(火曜日)
理想追い スイング見失った川岸
ジュニア時代から10年に1人の逸材と言われた川岸良兼(35)が、来季ツアー出場をかけた予選会で予選落ちした。今季の賞金ランキングは109位で、ツアー出場2年目から11年連続で守ってきたシード権を既に失い、来年のツアー出場はほとんど出来なくなった。
ゴルフの難しい点は、自分で自分のスイングがわからなくなることだろう。川岸の悩みは、ダウンスイングに出ている。よどみがあるのだ。下半身と上半身のバランスが取れずに、詰まった状態でインパクトを迎えている。明らかに努力をしてスイングの形を作ろうとしていることがうかがわれる。理想のスイングを求める過程で、自分で自分のゴルフを崩してしまったものであろう。練習にも<問題>があったのかもしれない。アメリカ人がゴルフをターゲットゲ ームととらえ、プレー中心の練習を心がけるのに対し、日本人はスイングの形にこだわる傾向があるため、打球練習を中心とする。ショートゲームにかける練習時間の違いをみれば一目りょう然だ。川岸も実家が練習場を経営していたことから、打球練習に終始したようだ。
悩める日本人ゴルファーを象徴しているような川岸。心理面を含めてサポートをするティーチングプロが、今の彼のもつれた糸を解いてくれるかもしれない。
2001年(平成13年)12月18日(火曜日)
ゴルフ界にもテロ影響
アメリカのテロ事件で、ゴルフ界にも多大な影響があった。13日からミズーリ州のセントルイスで予定されていたアメリカン・エキスプレス・チャンピオンシップが中止になったほか、28日からイギリスで開催予定のライダーカップは1年延長となった。
私がアメリカに留学していた20年前、ルームメイトのユダヤ人の自転車が、めちゃめちゃにつぶされたことがあった。2000年の歴史を経てもいまだに根強い宗教問題があることを、知らされた<事件>だった。
また、他の国の人々が、アメリカやアメリカ人に対して持っている感情は、日本人のそれと大きく違うこともわかった。立場が変われば、物の見方が大きく違うものだなと思った。
それは、ゴルファーのプレーにも現れているようだ。日本人はアメリカでのプレーにあこがれる。しかし、他の国のプレーヤーは、チャレンジの場と位置付け、自分の文化やプレースタイルを保ちながら、世界の最高峰でどの程度通用するのかを試している。
世界の舞台で独自のスタイルを貫き通す日本人ゴルファーが、数多く誕生してほしい。
2001年(平成13年)9月25日(火曜日)
大器にプロの自覚を
星野英正プロが関西オープンで初優勝した。
アマチュアで通算52勝を挙げ、鳴り物入りで昨年プロ入り。そんな彼が5試合連続で予選落ちするなど、プロの<洗礼>を受けて苦しみながら、28戦目で栄冠をつかんだ。
優勝インタビューで、気になったことがある。彼は「ツアー競技でない、小さなトーナメントですが、優勝できてほっとしています」とコメントした。
しかし、関西オープンと言えば、1926年にスタートした、日本最古のトーナメント。プロ入りして日が浅くても、大会の歴史を知らないではすまされない。
アメリカのツアープレーヤーには、ファンとメディアへの対応が、最も重要なこととして教育される。プロトーナメントを支えているのはファンなのだから、当たり前のことだろう。
日本の場合、プロの言動に対しての教育が行き届いているとは言い難いのが現状だ。
これからの日本を代表する逸材だけに、星野プロには「自分が日本のゴルフ界を背負っていく」ぐらいの自覚をもってもらいたい。
2001年(平成13年)9月4日(火曜日)
上達する秘けつは…
「45分でゴルフがうまくなる!」(PHP研究所、1100円)という本を先日、出版した。
「そんなにすぐゴルフがうまくなれば苦労はしない」という声が聞こえそうだが、思い通りにゴルフが上達してきた人は、全体のゴルファーの3%と言われている。残りの97%は「こんなはずはない」と思いながら、フラストレーションの溜まったゴルフライフを送っている。
そんな方のためにエッセンスを。まず、ゴルフはシンプルに、そしてポジティブに考えること。それはショットの前でも後でも、である。ショットの前では、目標のイメージを鮮明にして、邪念を捨てて良い結果を確信する。ショット後は、すべての結果を受け入れて、自然と融合するのだ。
なぜなら、次のショットへのプロローグになるだけではなく、ゴルフをエンジョイする最良の方法になるから。今までの対処の仕方を変えてみては。
シンプルに考え、楽しく積極的に目標を持って忍耐強くゴルフに打ち込めば、きっと明かりは差すだろう。大多数のゴルファーの一助になれば幸甚である。
2001年(平成13年)8月28日(火曜日)
手で投げ距離感養う
芝の品種改良が進み、日本のゴルフ場でもベントグリーンが多くなってた。高麗芝に比べて芝目の影響が少なく、速いパッティングを楽しめる。
グリーンの速さを測る道具として、スティンプメーターと呼ばれる3フィート(約90センチ)の溝のついた棒がある。上部から6インチ(15センチ)のところに置いたボールが自然に転がるまで棒の一端を持ち上げ、グリーン上をボールが転がる長さの平均を出す。一般のベントグリーンなら約8フィート(約2.4メートル)で、10フィート(約3メートル)を超えればトーナメント並みの高速グリーンと言える。
最近では、グリーンの速さを表示するゴルフ場もあり、トーナメントプロのような気分でプレーすることも出来るが、ベント芝でのパッティングは微妙なタッチが要求される。
そこでワンポイントアドバイス。スタート前に、練習グリーンでくだりのロングパットを行う。最初は下手投げでボールを転がして距離感を養う。反対に、上りのロングパットも練習をしてみよう。同じ10メートルでも、下りと上りのパットで、タッチの違いを十分に認識することが大切だ。
2001年(平成13年)7月31日(火曜日)
独自スイング混戦制す
第130回全英オープンは、最終日のスタート時、5ストローク差に32人がひしめく大混戦だった。その中には、マスターズチャンピオンのランガーやウーズナムもいた。モンゴメリーやエルス、ガルシア、パーネビックの上位陣を見ていると国際色が豊かだ。スイングも独自のスタイルを持っている。
その中でも、ひときわユニークなスイングの持ち主がメジャー初優勝を果たしたデービット・デュバルだ。
彼のグリップは、超フック。普通のスイングなら間違いなく左に大きく曲がるショットになるが、彼はインパクト前から一気に体をリリースし、目線と頭を一緒に向ける。今までならタブーと言われていた「ヘッドアップ」を、あえて自分のスタイルに取り入れているのだ。
体を開き気味にして打つことは、インパクトゾーンが長い利点もある。そして、無理に頭を残そうとする今までの理論よりも、いくらか自然な体の動きではないだろうか。
『自分に合ったスタイルを確立することの大切さ』を教えてくれたメジャーでもあった。
2001年(平成13年)7月24日(火曜日)
丸山に強力“助っ人”
丸山茂樹がPGAツアーで、プレーオフの末、初優勝を果たした。
実は、このトーナメントの初日、丸山は10番でダブルボギーをたたく最悪のスタートを切った。その後もバーディーとボギーが交互に出ていたのだが、18番と1番の連続バーディーと4番のイーグルで、一気に波に乗ることが出来た。最終日には、8番のミドルでセカンドが直接、カップインするイーグルにも恵まれた。
今年から丸山プロをサポートしているティーチングプロで、日大同期の内藤雄士さんによると、スライスラインでのパッティングでハンドファーストになり、フェースが開き気味になっていたが、大会前に修正したことで「今はパッティングが特に安定している」という。
服部道子や小達敏昭のコーチを務める内藤さんだが、旧知のティーチングプロの存在は、丸山にも心強かったはずだ。
2人は優勝の感激も冷めぬまま、シカゴ空港からイギリスに向かった。今週開催される第130回全英オープンで、二人三脚での活躍に期待したい。
2001年(平成13年)7月17日(火曜日)
息吐いて飛距離アップ
女性をレッスンしていて思うことは、スイングの形は整っているのに、ヘッドのスピードがなくボールが飛ばないゴルファーが多い点だ。タイガー・ウッズのヘッドスピードは秒速60メートルを超えるといわれる。時速にすれば200キロ強。飛距離は、風などを除けば、ボールの初速と打ち出し角度、スピン量で決まる。一般ゴルファーのヘッドスピードは、秒速約40メートル。これが女性となると30メートルそこそこ。
一般的にヘッドスピードを5倍したのが飛距離と言われている。非力なゴルファーほど力を入れて思い切り飛ばそうとする意識が強く、腕を一生懸命振ろうとして、逆にスラブヘッドが走らないスイングとなる。理想的なのはトップでクラブの重みが感じられるほどのリラックスすることだ。そうすればうち急ぎにならず、いわゆるスイングの「ため」が出来る。女性の場合はクラブを支える力が弱く、グリップを握り締めてしまうことが多い。
そんな時には、息を吐きながらバックスイングをすると意外と緊張がほぐれる。ちょうど「チャー・シュー・メン」のチャーとシューで息を吐きながらバックスイングをして、メンで一気に振りぬく要領だ。意外とヘッドスピードが速くなる。
2001年(平成13年)6月26日(火曜日)
「重圧」トッププロも同じ
全米オープンにもつれ込んだが、第4日の最終ホールを見ていて、「ゴルフはメンタルなスポーツだ」と思った人は少なくないだろう。
優勝争いをしてきたラティーフ・グーセン、スチュワート・シンク、マーク・ブルックスの3人が、18番で3パットをしてしまった。しかもグーセンは4.5メートル、シンクも6メールからの3パットだ。メジャー大会の優勝争いをしている選手がそろってミスをするほど、心理面が作用するのがゴルフなのだ。
よみうりオープンを制した福沢義光プロが最終ホールで沈めた20メートルのイーグルパットを思うと、コントラストが大きすぎる。奇跡的なパットが決まったのは「絶対に沈める」との信念がこもっていたからこそだ。
米国の著名なスポーツ心理学者ボブ・ロッテラ博士によると、相手がトッププロでも、ゴルフを始めたばかりの初心者でも、教えることは一緒だそうだ。「目の前の一打に集中しなさい」と。
300ヤードを超えるドライバーショットを打つトッププロでも、同じ人間だ。優勝がかかると、5メートル前後を3パットする。プレッシャーでつぶれるのは一般ゴルファーだけではない。ご安心を。
2001年(平成13年)6月19日(火曜日)
服部復活に影の演出者
先週の行われた女子トーナメントのサントリーレディースオープンで、服部道子が1年8ヶ月ぶりの優勝を飾った。
復活を<演出>したのは、ジョー・ティールさん(52)。4年半前から彼女のサポートをしている米国人ティーチングプロだ。
「ゴルフは、自分の内面を知ることが出来るすばらしいゲーム。そのゴルフ広める天職につけて幸せだ」との言葉通り、ビデオカメラやストップウオッチなどのレッスン道具とメモを手に、火曜日から服部に付き添いコースを回った。
今回、服部に指導したのは、▽スタンスを目標に対して正確に向ける▽スイングルーチンまで含めたテンポを一定にする▽スイング中のバランスを保つ─の3点。
最終日の服部は、前半優勝を意識して山田かよにリードを許したが、後半、4バーディーと立て直し逆転した。「トップの座を譲ってからミチコのゲームがスタートした。彼女に言ってきたのは、『いかに自分のメンタルクライメット(心の状態)をコントロールするか』ということだったんだ」。華やかな表彰式の傍らで、サポート役に徹したティーチングプロは満足げであった。
2001年(平成13年)6月12日(火曜日)
はし持ち替えて左の訓練
ゴルフ練習場連盟ので先日、北海道のゴルフ場でプレーする機会に恵まれた。
本州と違い一面、ベント芝。枯葉がないため、緑のじゅうたんが敷き詰められているようで、コースに立つだけで爽快感に浸れた。
白樺の林と池で各ホールがセパレートされた趣のあるコースだったが、アプローチショットには苦しんだ。高麗芝と違って軟らかいベント芝では、フェアウエーからの第2打のボールは、常に沈み気味。アプローチでは柔らかなタッチが必要なのに、ソフトなタッチで打てなかった。
芝の種類にかかわらず、アプローチで「ガツン」と打ち込んでしまうアマチュアゴルファーは多い。緊張感だけでなく、一般的に右効きの人は、左手を使った柔らかなフォロースルーをとることが難しい。普段、左手で茶わんを持ち右手ではしを使っているので、左手を持ち上げる感覚が発達していないからだ。
アプローチなどでの強いインパクトは、右手の使い過ぎから起きることが多い。時には左手にはしを持ち、左手を下から上げる動きを訓練してみよう。ミスショットが少なくなるかもしれない。
2001年(平成13年)5月29日(火曜日)
自分に合ったボール選び
ゴルフは、自分の好きな種類のボールが使える数少ないスポーツだ。
糸巻きボールに代わり、飛距離の出る2ピースや3ピースボールがアマチュアでは主流。自分のプレースタイルに合った種類のボールを求めるプロは、スピンを利かせることが難しい上、硬いフィーリングの「飛ぶボール」は敬遠していた。しかし、し烈な開発競争が「飛んで止まる」ボールを生み、プロも採用し始めた。昨年秋から新しい種類に変更したフィル・ミケルソン(米)は「タイガーとの飛距離の差を感じなくなった」と、コメントしている。また、あるアメリカの男子プロは「これまでよりも、10ヤード以上飛ぶ」と、女性用に市販されている軟らかいボールを使っている。
前週の試合で3位の手島多一は、研究熱心で知られる。自分に合ったボールを探すため、昨年はメーカーと契約せず、20種類以上も試した。今季も8試合で4種類のボールを使い、アイアンのシャフトは毎週のように変えている。
アマゴルファーは、プロのようにひんぱんにクラブを変えるわけにはいかない。でも、ボールなら簡単。わずか数百円で自分のゴルフがかえられるかもしれない。
2001年(平成13年)5月22日(火曜日)
グローバルスタンダード
手前みそで恐縮だが、先日、ホールインワンをしてしまった。
トーナメントプロと違い、私のラウンド数はサラリーマンと同じくらいの「月イチ ゴルファー」といったところ。練習もままならず、純粋にゴルフを楽しむ境地に入ってきた。
今では、ミスショットも素直に受け入れられる。スイングも無理しないため、飛距離も伸びてきたほどだ。草木の緑や鳥のさえずりも心地よく、ゴルフの楽しみ方が広がった気持ちさえする。
しかし、困ったことがある。プロゴルファーは、ホールインワン保険に入ることができないのだ。
アマチュアの方は、保険で記念品などのお祝いを配ることが多いが、このお祝いや、ハーフ終了後の昼食などは、日本特有のもの。最近では、18ホール続けてセルフプレーで回るコースも増えた。ゴルフもグローバルスタンダードの時代になってきたのだろう。
一緒に回った知人は「黙っていてやるから、どこかに連れていけ」とうるさい。でも、私も時代の流れに沿ってアメリカ方式でいくことにする。
2001年(平成13年)5月8日(火曜日)
米で学んだ自分の形
米国のシカゴで先ごろ行われたゴルフイベントに、日本からティーチングプロとして参加し、ケーブルテレビのレッスンを担当した。視聴者に興味を持ってもらうため、アメリカ人でも知っている「空手チョップ」などを例に挙げ実演したら、「具体的でわかりやすかった」と好評だった。
「カラテ」に例えたのは、ドライバーショット。空手でかわらや板を割る時、突き抜けるイメージで手を振る。決してかわらや板に、手をぶつける感覚ではない。ゴルフスイングも同じ。クラブヘッドをボールに当てに行くのではなく、クラブを振り抜くイメージの大切さを、空手で理解してもらった。
バンカーショットでは、1万円札の真ん中にボールを置いて、打ってみせた。バンカーではミスショットの恐怖心からスイミングが硬くなり、クラブヘッドが砂の中に深く入るミスを犯しやすい。バンカーショットは、ボールの5センチ手前からベーコンのように薄く砂をはぎ取るため「ベーコン・ストリップ」と呼ばれる。1万円札の幅で薄く砂を取り、しかも高価なお札を破らないように滑らかなスイングを心がけなければ、ボールは出ない。破れることなくボールと一緒にバンカーから飛び出した紙幣が「100ドル近い」とうち明けた実技は、インパクトがあったと後で聞いた。
アメリカでは、常に個人のアイデンティティー(特異性)が尊重される。反対に、自己主張しなければ、認められないところがある。ゴルフスイング、しかりである。個性豊かな自分のスイングの形を大切にするし、尊重もされる。青木功プロが米シニアで人気があるのは、独自のスタイルを持っているからであろう。決して奇をてらったわけではなかったが、レッスンについても、自分の形を確立することの大切さを教えてもらった。
2001年(平成13年)4月24日(火曜日)
強い精神力 勝利の秘けつ
男子ツアーの関西での今季初戦となる「つるやオープン」は、田中秀道の見事な逆転優勝で幕を閉じた。スタートホールのティーショットをOBとしたが、「あきらめず、それ以後吹っ切れて」違う自分を演じることが出来たのが勝因だ。
そう言えば昨日の賞金王の片山晋呉が終盤の4試合で3勝を挙げた時は、強い自分を演じきっていた。また、8日閉幕したマスターズでのタイガー・ウッズは、映画の主演男優のごとく、他の選手よりも役者が一枚も二枚も上であった。この3人に共通するのは、メンタルトレーニングを重視している点だ。自分の世界に入りきっている。
田中プロは、トーナメントで最も人気のある選手の一人である。さわやかで、ファンサービスを怠らず、マナーも抜群。しかし、最初からそうではなかった。以前は、納得できないプレーの後で物に当るなど、首をかしげるマナーが見受けられることもあった。
しかしある人に注意され、行動パターンを180度変えるようにした。また自分のプレースタイルを演じる努力を積み重ねてきた。ある意味で役者のように。そして理想の“演技”ができるようになった時、一つレベルが上がったのではないだろうか。それはちょうど、マナーが良くなってきた時期と重なる。
我々もコンペでの朝一番の失敗や、1ホールでの大たたきはいくらでもある。そういう時に気持ちを切り替え、役者になってみては。ひと味違ったゴルフができるかもしれない。
2001年(平成13年)4月17日(火曜日)
オーガスタ 日本勢の活躍期待
最初のメジャー大会となるマスターズが4月5日に開幕する。注目は、タイガー・ウッズ(米)。昨年、マスターズを除く三つのメジャーを制し、この大会に優勝すれば、過去だれもなし遂げていないメジャー4大会連続制覇となるからだ。
私が舞台となるオーガスタを訪れたのは、グレグ・ノーマン(豪)が最終日に6打差をニック・ファルド(英)に逆転された1996年。最終日の翌日、私の2組前をラウンドしていたのが、今回、初出場する伊沢利光。当時、テレビのリポーターとして来ていた。あれから5年。やっと思いが実ったわけだ。
オーガスタの名物といわれるガラスのグリーンは実は傾斜がきついから転がる。従って、グリーンを狙うアイアンショットの精度が要求される。つまり、上りのパットが残るようにピンポイントで攻める技術が必要となるわけだ。
伊沢はプロ転向後、すぐに渡米、4年間ミニツアーを転戦した経歴がある。しかも3勝。2月の米ツアー・ニッサンオープンの最終日には悪天候の中を66のベストスコアで追い上げた。伊沢とともに日本からマスターズに参戦するのは、丸山茂樹、片山晋呉。新世紀を迎え、ジャンボ尾崎の時代から真の意味で世代交代するためにも、彼らの活躍が期待される。
2001年(平成13年)4月3日(火曜日)
失敗 落ち込まず前向きに
いま、滋賀・瀬田ゴルフコースで行われているミズノクラシックのプロアマ戦に参加した。プロの私がアマチュア側で出るのは、少し気が引けたが、主催者の招待を素直に受け入れることにし、ラウンドした。
一緒に回った女子プロはリサロッテ・ノイマン。スウェーデンゴルフ界のパイオニア的な存在で、米女子ツアーで通産12勝を挙げているベテランだ。
プロアマのルールはスクランブル競技。プロとアマの4人がティーショットを打ち、第2打以降はベストボールを選択して、その場所から5人がプレーしていく。グリーン上でも同じ位置からパッティングをするため、2人目からラインが分かる。
18番で3メートルの下りのパットが残った。私を含めてアマ4人が外し、ノイマンのパットになった。当然、入れてくれるだろう、と期待したが、スライスラインが思ったように曲がらず、カップの縁をかすめただけだで、外れた。
その時、彼女は「ディフィカルト(難しい)パット」とつぶやき、決して自分自身を責めなかった。「なるほどなぁ」と思った。私もそうだが、アマチュアゴルファーには、こんあことがよくある。OBをしたり、絶好のライからアプローチを失敗する。すると、ふがいなさに腹を立て心の中で自分を打ちのめし、落ち込んでいく。
ノイマンは、パットを外しても、冷静に結果を受け入れ、次のプレーにつなげていこうとしていた。「自分に怒りを向けたって、プラスにはならない」。それを学んだだけで一緒にラウンドした価値があった。
2000年(平成12年)11月4日(土曜日)
「イップス」前向きに乗り越えて
知り合いから「イップスになった」と、相談を受けた。練習場では、どうってことはない。フォームもスムーズだし、きちんとボールも捕らえられる。だけど、ティーグラウンドに立つと、途端におかしくなる。「ドライバーが怖くて打てない」と言うのだ。腕が硬直して、クラブが振り抜けず、とんでもない打球が飛び出すそうだ。
「ゴルフのホームドクター」を自称して15年。どんな病気でも治せるつもりだが、しかし、「イップス」だけはたちが悪い。なぜなら、技術的な問題ではなくて、メンタルな部分がすべてで、それも様々な症状があるからだ。しかも、これといった特効薬や治療法がない。冷たいようだが、「自分自身で克服しなければ」と言うしかなかった。
私の身近にいるプロも、長い間苦しんでいた。最初、バックスイングの上げ方を考え過ぎた。そして、ダウンスイングになると、力が入って、ボールを当てにいってしまう。打球のイメージも浮かばない。
症状は深刻で、半年もクラブを握らず、滝に打たれるなど、精神修行もやった。まるで出口のないトンネル。ようやく明かりがみえたのは、「どこへ打つのか」を強く意識し始めた時だった。バスケットボールのフリースローでは、カゴしか頭にないはずだ。ゴルフも同様。スイングの際、ボールを凝視せずに、ターゲットへの弾道を思い浮かべたら、体が自然に対応するようになった。
この病気は本当に厄介だ。でも、ゴルフに真剣に取り組んでいる上級者に限って侵されるから、「うまくなったんだ」と、前向きに考えて乗り越えてほしい。
2000年(平成12年)7月29日(土曜日)
自然と人間が調和した聖地
11年前、セントアンドルーズでプレーをしたことがある。青年会議所の旅行で英国を訪問した時、「ちょっと、行きたいところがあるので」と、言いわけをして、一人、ロンドンから飛行機に飛び乗った。世界で最も古いゴルフコースといってもパブリックなので基本的にはだれでも回れる。予約もなにもしていなかったが、ラッキーなことに、3人のグループがいて、そこに入れてもらえた。
コースはスコットランドのリンクス(海辺)にあり、各ホールは自然のまま。大きな立ち木は一本もなく、荒涼とした原野といった感じで、日本の河川敷と似ていないこともない。しかし、そこには歴史が奏でる重厚な調べが漂う。1番のティーグラウンドの背後には、ゴルフルールの総本山であるR&A(ロイヤル&エンシェント)のクラブハウスが見守っており、立っているだけで、聖地を訪れた喜びと感動に身震いしたのを思い出す。
スタートボックスの横には、数人のキャディーがおり、プレーヤーが個人で雇うことができる。なぜなら、初めての人にはどこへティーショットを打てばいいのか、さっぱり分からないからだ。「タコつぼ」と呼ばれる深いバンカーがフェアウエーに点在し、どこにあるのかさえ、つかめない。
最も印象に残っているのが18番ホール。ティーグラウンドから、海辺へ散歩に行くおじさんが、ゆっくりとフェアウエーを横切るのが見えた。なんとも言えない牧歌的な雰囲気。自然と人間が調和した情景が目に焼きついている。
そのセントアンドルーズで繰り広げられている全英オープン。だれが制覇するのか、興味は尽きない。
2000年(平成12年)7月22日(土曜日)
だいご味は多彩な攻めでコース攻略
1番ボールのティーグラウンド。ショートホールでない限り、大抵のゴルファーはドライバーを手にしているようだ。しかし、米国は少し違う。先月の全米オープンでも、タイガー・ウッズをはじめ、トッププロたちは、多彩なクラブでティーショットを放っていた。実は、ここに日米のゴルフの違いが現れている。
米国の場合、ゴルフ場は国土が広いのでわざわざ山の中に造成する必要がなく、ほとんどがフラットな平地にある。このため、変化を持たす意味のあって、池やブッシュ、バンカーを点在させ、ホールをセパレートしている。だから、ショットが曲がるとたちまちペナルティーとなり、第1打のクラブとしてドライバーから5番アイアンまで選択肢が広がるわけだ。
日本の場合、多くは山を切り開いて造成しており(とくに関西はそうである)、フェアウエーの一方が山、反対側が谷、という地形になっている。こういうホールでは、迷わず山側へ打てばいい。少々曲がってもボールは斜面に当って戻ってくるはずだ。
こうなると、いかに飛ばすかが喜びになってくる。でも、それだけでは底が浅い。バッグに入っている14本のクラブを駆使して、どうコースを攻略するか。仕掛けられたわな(ハザード)に引っ掛からず、パーを奪っていく。そんな「ターゲットゲーム」が、ゴルフ本来のだいご味だと思う。
最近はアメリカンタイプのコースが登場してきた。ゴルファーの思考も変化してほしい。
2000年(平成12年)7月15日(土曜日)
「心技体」最強のタイガー
タイガー・ウッズの圧勝劇だった全米オープンを、現地のペブルビーチゴルフリンクスでつぶさに見た。今週は、アメリカからその報告と感想を───。ペブルビーチの美しさは、言葉では言い表せない。コースのそばの海には、ヨットやクルーザーが停泊し、夕日を浴びながら浜辺を散策する姿は、もう別世界のシルエットだ。
コースも素晴らしい。18のホールには、それぞれの顔があり、2つとして同じようなものがない。斜面が至る所に点在し、ショットのわずかなぶれも許してはくれない。さらに、グリーンは小さくて硬い。大会前、「イーブンパーで回れば優勝」といわれた通りの難易度だった。
そこで、タイガーだけがアンダーを記録、それも12アンダーというとてつもないスコアを出した。ドライバー、アイアンともショットは非の打ち所がない。しかし、タイガーの強さは、むしろショートゲームで光っていた。4日間、一度も3パットがなかったし、バンカーでも、いとも簡単に「ベタピン」につけた。そしてボギーでも笑みを浮かべ、冷静さを失わなかった。
正に「心技体」のそろった最強のゴルファーだろう。ほかのプロたちも、ほとんどがあきらめのコメントだった。リー・ジャンセンは、「タイガーの予定をチェックして、これからは彼の出ない試合にエントリーする」とまで言っていた。
新記録の15打差。ぶっちぎりのメジャー制覇は、今後、タイガーには無形の力になってくる。来月の全英オープンが楽しみだ。
2000年(平成12年)6月24日(土曜日)
アプローチ 家庭での練習法
アマチュアの人とラウンドして、いつも「もったいない」と思うのは、寄せの失敗だ。まずまずのショットでグリーン周りまで来て、うまくいけばパー、悪くても2パットでボギーというケースで、アプローチをミスしてしまう。ダブってバンカーに入れたり、トップでグリーンを往復してみたり。わずか10ヤードか20ヤードで、5打も6打もたたいたら、だれだってがっくりくる。
フルショットに自身のある人ほど、意外とアプローチが苦手らしい。ピンが近くなると、落ち着いてショットが出来なくなるようだ。クラブヘッドをボールに当てにいって、インパクトで「ガッツン」と強くヒットさせる。これでは、ターフを深く取り、距離も出ない。逆にうまい人のアプローチは、ゆったりとしたスイングで柔らかいボールを上げる。ターフも薄い。
では、そんなショットをどうしたら打てるのか。練習以外にないのだが、家でも簡単に出来る方法がある。カーペットの上にビデオテープを横にして置き、約80センチ離れてピッチングウエッジで実際にボールを打ってみるのだ。その時、クラブは右手の指がシャフトに触れるぐらい短めに持つ。そして、一定のリズムで、ゆっくりとスイングするのがコツ。最初はテープに当ることが多いだろうが、そのうち、ふわっとした柔らかいボールが打てるようになる。
ただし、反対側にクッションを用意するなど、くれぐれも安全策を忘れずに。でないと、家庭から総すかんを食うことになる。
2000年(平成12年)6月10日(土曜日)
待ち遠しい格安ネット店
日米のゴルファーを取り巻く環境は天と地。日本のゴルファーは全く恵まれていない。
まず、プレー代が高い。今年、兵庫県にオープンしたセルフのパブリックコースは「平日1万円」が売り文句だが、これが予約で一杯だと聞く。世の中は不景気。より安く、いいコースをと探し回った涙ぐましい結果が「1万円」になったようだ。
さらに、新品のクラブが結構な値段だ。チタンが主流のドライバーは、1本がだいたい5万円ぐらいから10万円前後。アイアンの10本セットは18万円が平均的な値段らしい。この出費は、一般の家庭では少し勇気がいる。買い替えたものの、家族の間で波風が立った経験は、割合多いのではないか。
その格差が少しだけ埋まる可能性が出てきた。というのは、インターネットのゴルフメーカー「チップショット・ドットコム」がアジア市場に進出を計画しているのだ。
「チップショット」は、実在の店舗を持たない、インターネット上のお店。従業員などの経費が要らない分、格安で自社クラブを販売して成功した。ゴルファーは、パソコンで「チップショット」のホームページにつなげば、有名なブランドからオリジナルまで、好きなクラブを選んで購入できる。ただ、実際に振った時の感触は、手元に届くまで分からないのが欠点か。しかしながら、ゴルファーのとっては、選択肢の広がる福音。日本での「開店」が待ち遠しい。
2000年(平成12年)5月13日(土曜日)
プロのくわえたばこ言語道断
13日から兵庫県川西市のスポーツ振興CCで「つるやオープン」が始まり、4週ぶりで男子ツアーが再開された。会場の山の原コースは、メンテナンスが行き届き、オーバーシードされたフェアウエーはまばゆいばかりの緑。いよいよ本格的なゴルフシーズン到来、という感じがする。
プロがその技を競うには、申し分ない舞台が整ったわけだが、トーナメントでは、緊張感とともにギャラリーと一体となった雰囲気が大事だ。そこであえて苦言を一つ。
それはプロたちの喫煙マナーについてだ。12日に行われたプロアマ戦を見て、驚かされた。なんと、たばこを吸う姿が多かったこと。しかも、一緒にラウンドしているスポンサーたちの目の前でスパスパとやっていた。
たばこは個人のし好品だから、喫煙自体をとやかく言う気はさらさらない。しかし、ゴルフもスポーツだし、プロの試合は見てもらうのが商売。もっと、自分の健康管理と人目に気を使ってもいいのではないか。
ジャック・ニクラウスは、ヘビースモーカーと聞いている。だが、トーナメントで彼が喫煙しているところを見た人はほとんどいないはずである。以前は、たばこを吸いながらプレーをしたことがあった。でも、その姿をテレビに映し出されて、反省したという。
それに引き換え、日本のトッププロは───。技だけでなくマナーでも米ツアーに後れを取っている。くわえたばこで、打球練習をするなんて、言語道断だ。
2000年(平成12年)4月15日(土曜日)
ストレッチで理想のトップ位置
年々、体力が衰えてくるのはいかんともしがたい。200ヤードを超えていたドライバーの飛距離が徐々に落ち、第2打が7番アイアンから5番へ、だれでも「もう、年やから」と嘆く。
しかし、待っていただきたい。確かに10代や20代のころとは、パワーは違うだろう。でも、ゴルフスイングは、腕力があればいいというのではない。重要なのは体の回転なのだ。それを曲がり角にきたゴルファーは、ついわすれてしまっている。
「体の硬さ」。これが実は大敵。年配ゴルファーは、以前のように肩を十分に回しているつもりでも、知らず知らずにトップの位置が浅くなり、フルスイングしていないケースが意外に多い。つまり、スリークオーター程度でクラブを振っているため、当然、ヘッドスピードが落ち、飛距離に影響するというわけだ。これが悪化すると、腕だけで強振するようになり、結果、スイングリズムが崩れ、出口の見つからない迷路へと入り込んでいく。
だけど、この治療はそう難しいことではない。体の柔軟性を取り戻せば、問題は解決する。そこで理想的なトップの位置を作るストレッチ体操を紹介しよう。まず、イスに座り上半身だけをねじり、左あごの下へ持ってくる。もし、出来なかったら、それぞれの最大限のところで構わないから15秒間我慢する。
オフィスでも簡単にやれる体操なので、毎日3セット、3週間続けてほしい。そうすれば、きっと、若き日のスイングがゆっくりよみがえってくるはずだ。
2000年(平成12年)2月26日(土曜日)
米ツアー隆盛 努力の賜物
いま、ゴルフ界の最大の話題はタイガー・ウッズの快進撃だ。先週、まさかの大逆転で6試合連続優勝を飾り、今週もその連勝が伸びるかどうか、胸がわくわくする。
こんなスリリングな気持ちを味わえるのが、プロスポーツのだいご味だが、「ウッズ」というスーパーヒーローの出現がいかに大きいものか、米ツアーの盛り上がりが極端に示している。トーナメントの盛衰のバロメーターとなる賞金総額をみると、昨年の米ツアーは、約158億円にのぼった。欧州は約69億円。これに対して、新ツアー機構を立ち上げた日本は約33億円だった。
つまり、米国は日本の5倍、欧州は2倍の規模のトーナメントが行われており、それだけ活気があるというわけだ。ところが、10年前は、そんなに大きな差はなかった。
日本は26億円で、米国が2倍の53億円、欧州に至っては日本より少ない23億円しかなかった。
なぜ、こんなに水をあけられてしまったのか。たしかに、バブルの崩壊で景気が冷え込み、スポンサーの企業が相次いで撤退した。ただ、日本と違って欧米の場合、ゴルファーを育て「明日のトーナメントを担うスター選手」の発掘に躍起になっていた。
全米のゴルフ場は1万6300か所あり、日本の約7倍だが、数が多いだけではない。低料金で気楽にクラブを握れるし、子供でもラウンドできる。しかも練習用の施設は整っており、才能を開花させる環境は雲泥の差だ。
この中で「ウッズ」が出現した。米ツアーの関係者にとっては、努力の賜物なのだ。
2000年(平成12年)2月12日(土曜日)
短期おこさず“GAS”確認
車を運転する時、エンジンをかけると、まずガソリンがあるかどうかを確認するでしょう。ゴルフもショットの前にGASのチェックが必要だ。Gはグリップ、Aはアライメント(方向)、Sはスタンスのことである。GASをチェックしないでスイングをあれこれ考えるのは、ガス欠なのにエンジンの調子を心配しているようなものだ。
グリップは先週、説明したので、今回はA(方向)とS(構え)を取り上げる。
ゴルフは射撃やアーチェリーと違って目標を見ながら動作ができない。ショットの際は、下にあるボールを見つめているからだ。だから、必ずボールの後ろに立って目標を定め方向を確認しなくてはならない。「そんなことは分かっている」と言われるだろうが、コースでは忘れがちだ。OBが続いたり、短いパットを外すと、カッとするのがゴルファー。そんな時こそ、いま一度、GASを思い出してほしい。
大切なことをもう一つ。ボールに集中し過ぎると、目標への意識が薄れてしまう。まず、頭の中にターゲットのイメージを鮮明に描いてスイングをしよう。そうすれば、方向性の高いショットが生まれるはずだ。
続いてS(構え)。下半身がどっしりと安定し、バランスの良い構えがナイスショットのカギを握っている。さらに上半身の前傾はスイング中、一定の傾きで、背骨が回転軸となって一本の筋が通ったような状態が好ましい。
AとSは現実と感覚にギャップのあることが多い。時々、鏡やビデオでのチェックが必要だ。
2000年(平成12年)1月29日(土曜日)
グリップの握りソフトに
冬のゴルフはスコアメークがなかなかうまくいかない。コースの芝は枯れていて寄せが難しいし、厚着で体が回らず、思うようにショットが打てない。爽快感とは程遠いが、ゴルファーの性というのは悲しいもので、「今度の日曜日、空いてる?」と誘われると、つい、バッグを担いで出かけてしまう。では、厳寒期のラウンドはどうすればいいのか。レッスン書には、いろいろなアドバイスがあるが、私からは、春の本格シーズンを前に基本のチェックを提言したい。
まず、スイングの原点というべき「グリップ」。正しくクラブを握っていなければ、正確なショットが生まれるわけがない。しかし、人はそれぞれ体格が異なる。だから、グリップの形もまた、ゴルファーによって違って当然なのだ。問題はインパクトでフェースがスクエアになるかどうかだ。
効果的なチェック方法。自然な形のアドレスから力を抜いて、体の前にクラブを持ち上げる(だれかにヘッドを持ち上げてもらうほうがいい)。その時のフェースの向きを見る。クローズであれば、フックしやすい。逆に開いていたら、スライスが出やすい。
形のほかに大事なのは、握りの強さ。これは初心者ほど力を入れ過ぎる人が多い。書道を思い浮かべてもらいたい。上手な人は緩い握りで滑らかな筆遣いをするでしょう。ゴルフも同じで、上級者は柔らかいグリップをしている。ギュッと握ってはいけないのだ。
2000年(平成12年)1月22日(土曜日)
「ゆったりマッタリ」トップ安定
「ゴルフスイング中で最もシャフトに負担がかかるのはどこか?」。こう問われると、ほとんどの人がインパクトと答える。ボールを高速のヘッドでたたくのだから、そう考えるのが当然だが、正解はトップオブスイングなのだ。
バックスイングからダウンスイングへ移る瞬間、写真で見ると、シャフトがしなっている。それだけ負担が掛かっているのだ。切り返しによってクラブヘッドは逆方向に動くのだが、その慣性モーメントを止めて、方向転換するのは並大抵のことではない。「トップの位置が安定すれば一人前のゴルファー」とさえ言われる。私自身、バックスイングが速かったり、打ち急いで十分な切り返しの間がなかったり、とミスをよくやっている。皆さんも覚えがあると思う。ドラコンホールやアゲンストの風か吹くと、どうしても力が入る。その結果、リズムが乱れてトップもバラバラになって、とんでもないショットが生まれる。
それでも、どうしたらトップが安定するのか。残念ながらこれには近道がないようだ。スイングを繰り返して体で覚えるしかないが、私はトップでひと呼吸置くぐらい「ゆったり、マッタリ」のスイングを心掛けている(忘れることも多いが)。
今年もあと6日。まだ、打ち納めや年末コンペとラウンドの機会があるでしょう。その時は、気ぜわしい気持ちを横におき、「ゆったり、マッタリ」のスイングをしてください。では、2000年がみなさんにいい年でありますように。
1999年(平成11年)12月25日(土曜日)
ウッズの対抗馬に若手続々
プロゴルフツアーは、きょう3日目の日本シリーズと来週の沖縄オープンを残すだけ。今年も男子ツアーの機構が変わるなど、いろいろな出来事があった。でも、総括するのには、まだ早いようなので、ここは海外に目を向けてみたい。
まずは、タイガー・ウッズ。メジャーを含めツアー8勝、史上最高の8億円を稼いだゴルフは完璧だった。飛距離だけでこの成績がもたらされるわけがない。今年のウッズはショットの正確性が高まったことと、もう一つ、コース攻略が優れていた。ティーショットでドライバーを持たない場面が何度もあった。「確率の高いゴルフ」。24歳の若さで、これを見事に実践してみせた。
力と技を兼ね備えたウッズが来季も独走しそうな気配だが、対抗馬として若手を挙げたい。1人は19歳のセルヒオ・ガルシア。全米プロで2位に食い込み、一躍、スターダムにのし上がった。けれん味のないゴルフが持ち味で、大舞台でも物おじしない度胸がいい。ただ、スイングが大きすぎる欠点を抱えている。これをどう改善してくるか、注目の一つだ。
もう1人、彗星のごとく現れたのが、先週の全豪オープンに勝ったアーロン・バデリー。18歳のアマチュアだが、最終日、最終組で93年から欧州ツアー7年連続賞金王のコリン・モンゴメリーと回り、堂々と勝利をもぎ取った。4日間通算14アンダー、2位のグレッグ・ノーマンに2打差をつけた。
「ゴルファーの全盛期は30歳を超えてから来る」。3人の台頭は、こんな常識が2000年では通用はしないことを告げている。
1999年(平成11年)12月4日(土曜日)
HPでレッスン様変わり
2年前からホームページを開設している。スイングのちょっとしたヒントや練習方法などゴルフに関する情報を発信しているが、アクセスは増える一方で、最近では、月1000件以上にのぼっている。
先日は、カナダ在住の日本人からスイングについての相談があったし、フォームの分解は写真を画像で送ってきて、指導を請うメールもあり、その熱心さには驚かされる。
ほんのついこの間まで、ゴルフのレッスンといえば、練習場に通いインストラクターやプロから手ほどきを受けるのが初心者の姿だった。しかし、パソコンの普及でそれはもう昔話になりつつあるようだ。画面を見ながら、スイングの修正をしたり、質問に対して回答したりと、お互い顔を合わせることなくレッスンしている。
元々、ゴルフのレッスンは悩みの相談という側面が強い。だから、対面していると、踏み込めない部分がないとはいえなかった。ところが、インターネットだと、顔を見ていないので気兼ねがいらない。しかも、出掛けなくてもいい。ビールを片手にキーボードをたたいても差し障りがないし、いくらくつろいでも相手にはわからないから気が楽だ。(私がそうしていると言っているのではない。念のため)
ただ、ゴルファーは百人百様、個性がある。その微妙な感じは、パソコンの画面だけでは推し量れない。歯がゆい、と思いながら、こちらも資質を高めるべく孤軍奮闘する毎日である。なお、ホームページのアドレスは、http://www.naturalgolf.co.jp
1999年(平成11年)11月20日(土曜日)
能力に見合ったクラブ探しを
ゴルフで「飛ばす」ことは、大きな武器であり、魅力の一つでもある。緑のフェアウエーに白いボールが伸びていく時の心地よさ。これは何事にも代えがたい快感だ。しかも、パートナーより少しでも前に出ていたら優越感に浸れる。
だから、メーカーはクラブを開発すると、必ず「飛ぶ」ことを前面に打ち出して宣伝する。そして、ラウンドでは、「正確性」が大事と分かっていても、ショップで「不安定でも飛ぶクラブ」を手にするがゴルファー心理なのだ。
ヘッドスピードの上がる長尺クラブが人気になっているのも、その辺りの事情だが、「飛び」には、ボールの@初速Aスピン量B打ち出し角度、と三つの要素がある。
初速はスイートスポーツで捕らえないと、最大限にはならない。つまりヘッドスピードと同時にミート率も重要ということだ。次にスピン量。これは見過ごされているが、適度な回転数を与えないと、ボールは飛ばない。スピンが多いと吹き上がるし、逆だと、フォークボールと同じドロップ気味に落ちてしまう。
一般男性ゴルファーの平均ヘッドスピードは、毎秒40メートル前後で、理想のスピン量と打ち出し角度は、毎分3000回転と13度といわれる。この理想の数値を得るためには、まず、自分のデータを調べてみることだ。それから、最大の効果を得られる、能力に見合ったクラブを探せばいい。
宣伝文句に乗って衝動買いしていては、なかなかライバルを見返せないはずだ。飛距離であっと言わすためには、こうした科学的なチェックも必要ではないか。
1999年(平成11年)11月13日(土曜日)
終わり良ければすべて良し
ミスショットをした時、ゴルファーによって態度が違う。ツアーを戦っているプロは、クラブを投げつけるようなことはしないが(中にはいるようだが)、1打1打が生活につながるのだから、ポーカーフェースを装うのはなかなか難しい。どうしても怒りや落胆が表情に表れてくる。ましてアマチュアは感情を抑えることが至難の業だ。「アホ、間抜け」と罵詈雑言を自分自身に浴びせたり、「なんでやろ」とうなだれたり、まさに百人百様。
こういうパフォーマンスが悪いわけではないが、やっぱり、度が過ぎない方がいい。そこで、アドバイスを一つ。
「フィニッシュはその人の力量を表す」といわれる。ショットの後、ボールの行方を見る姿勢で、ハンディキャップが推測できるのだ。ゴルフのスイングは、トップの位置からフィニッシュまで一気に振り抜く。と同時に体重が前足に十分乗るのが理想。しかし、実際は、素振りのようになかなか最後まで振り抜けない。その解決法にこんなやり方がある。
ショットの後、ボールが地面に落ちるまで理想のフィニッシュの姿勢を取るのだ。これを練習の時から習慣付ける。心の中で「1、2、3」と数えてポーズを保つ。たとえミスショットでも、空振りでも、澄まし顔でフィニッシュを取る。それがだんだん自分のものになってくると、ライバルの見る目が変わるだろうし、スコアも間違いなくアップするはず。「終わり良ければすべて良し」なのだ。
1999年(平成11年)11月6日(土曜日)
見る者楽しませるシニアツアー
シニアトーナメントの雰囲気は独特だ。試合だから、ショットの時は張り詰めた緊張感に包まれるが、ギャラリーとの軽妙なやり取りなど選手のサービス精神はおう盛で、とにかく、見る者を楽しませてくれる。
グラハム・マーシュ(豪)が独創した日本シニアオープンでも、いい光景を見た。朝のスタート前に安田春雄プロが、アプローチの練習をしていた。そばに居たギャラリーの一人が、「どうやると、そんな高い球が打てるの」と声をかけた。
レギュラーツアーでは、まず、考えられないことだが、安田プロは「それはな、フェースを思い切り開いて打ち込むの」と、軽い口調で答えた。すると、たちまち人垣が出来て、即席のアプローチレッスン会が始まり、安田プロはギャラリーに「打ってみて」と、自分のクラブを渡した。
高度の技術が必要なロブショットは、そう簡単にやれるわけがない。笑いと声援の中、ようやくフワッとボールが上がると、拍手がわき起こり、レッスン会は幕となった。安田プロはそのまま、大勢のギャラリーを引き連れてスタートしたが、実に和やかで、楽しい一こまだった。
プロは、アマチュアにはまねの出来ないプレーを見せるべきだ。しかし、ファンを大切にして、トーナメントを盛り上げることも責任の一つではないか。その点、シニアの選手は、長い間この世界にいるだけに、一人一人が自覚を持っている。でも、楽しいシニアツアーは、来年、たったの3試合しかないという。もう少し増えてくれないものだろうか。
1999年(平成11年)10月30日(土曜日)
発想の転換でトラブル克服
グリーンを狙った会心のショットが、わずか数センチの差でバンガーに入り、トラブルに変わってしまった。そんな時、あなたならどうする。「きょうはツキがない」と天を仰ぐか、「なんて下手なんだ」と自分を責めるか、あるいは、我を忘れて怒り狂うか──。
人はそれぞれだろうが、以前、参加した米国プロゴルフ協会のセミナーで、「トラブルショットの克服」という面白い話があった。ドライバーが曲がって、林に打ち込んだり、ボールが崖の斜面に止まったり、と最悪の状況に遭遇した時の心構えについてだった。
こういう場面では、だれでも感情が乱れる。気持ちの整理がつかないまま、リカバリーショットに入ると、いい結果は望めないし、深みにはまる恐れさえある。そこで講師はこう言った。「トラブルと考えてはいけない」。そして「困難に立ち向かうチャレンジショットと位置付けてみよう」と提言していた。
小枝がスイングの邪魔になる。スタンスすら取れない。ディボットの跡にボールがある。でも、不運を嘆かず、ポジティブに「難度の高いショットに挑戦するんだ」と発想を転換しろ、というのだ。
ゴルフを人生にダブらせることが多い。ミスしても打ち直しが出来ないし、風雨の中でもプレーをしなければならない。逆境に立ち向かい、一打一打を積み重ねていく。しかも頼れるのは自分自身だけ。だから、スコアが悪くても投げやりになってはいけないのだ。「結果はすべて自分に返ってくる。」この言葉を肝に銘じておきたい。
1999年(平成11年)10月16日(土曜日)
悪天候と粘り強く付き合う
先週の日本オープンは、いろいろ考えさせられた。優勝した尾崎直道のスコアが10オーバー。ツアー優勝者の最多ストロークを更新する“おまけ”が付いた。なんでこんなスコアになったのか。
確かにコースセッティングは厳しかった。小樽CCは全長7200ヤードと距離がある。フェアウエーは狭く、ラフの芝は長くてタフだった。しかし、日本オープンでは、難コースは毎年のことだ。過去の優勝者もだいたい1けたのアンダーパーで20アンダーなんてあり得ない。
ではなぜ? それはスコアを左右するもう一つの要素、天候が最悪だったのだ。連日、海からの強い風が吹き荒れ、とくに最終日は最大瞬間風速19メートルと台風並みのコンディションだった。
そんな日のラウンドは、いかに耐え忍ぶかが勝負の分かれ目になる。尾崎直は11番を終わって、湯原に4打差を付けられていた。残り7ホール。プロ同士の試合ではこの差は逆転が厳しい数字だ。だが、尾崎直は、粘り強くパーを拾った。逆に湯原は、ビッグタイトルを目の前にして自滅していった。
ゴルフは自然を相手にするスポーツである。悪天候でもプレーをする。グリップが雨で滑ったり、ボールが風に流されたりする。こんな時はこう思ってほしい。「我慢しよう。いつかいいことあるから」と。
優勝を決めた17番ホール(パー3)で、尾崎直は豪雨の中、ティーショットを放ち、バーディーパットを沈めた。「耐え忍ぶ」。その大切さを体現した瞬間だった。
1999年(平成11年)10月9日(土曜日)
上達のポイントは「やる気」
ゴルフの上達の近道はあるのか、と尋ねられたら、「それはありません」と答えるしかない。でも、不可欠なものを一つ挙げさせてもらうと、それは「情熱」でしょう。
「もっとゴルフがうまくなりたい」。そう思って、ゴルファーはこつこつと練習を重ね、スイングを研究し、自分に合ったクラブを探し求めている。つまり、どれだけ時間とお金をかけるか。これが情熱の表れであり、その大小がスコアの伸び具合に影響する。
しかし、やみくもにクラブを握っても、シングルにはなれない。そこで、ゴルフスクールに通うわけだが、この選び方が難しい。せっかく、やりくりして時間を作り、安くない授業料を支払っても、さっぱり成果が得られないケースが意外と多い。
そんな中で、東香里ゴルフセンター(大阪府枚方市)の岡本光康コーチのスクールはユニークだ。「上達しなければ全額返金」してくれるという。
入学時にゴルファー個人の現状を把握したうえで、1年後の目標を設定。練習メニューの作成から精神、肉体面のトレーニング、コースマネジメントのサポートまで行って、目標達成に責任を持ってくれるのだ。
「じゃあ、一度、通ってみるか」と思われた方もいるかもしれないが、岡本光康コーチは、入学に絶対必要なものがある、と言う。それは「本人のやる気」。
これだけはスクール側では用意できないそうだ。問い合わせは同ゴルフセンター(0720-53-3500)まで。
1999年(平成11年)10月2日(土曜日)
子供の時から親しめる環境を
ゴルフは大衆的なスポーツになったのだろうか。競技人口はひと昔比べると、確かに増えているし、ツアートーナメントは毎週のように中継がある。マスターズをはじめ世界のメジャー大会も逐一、報道されており、その情報量は野球に次ぐくらい多い。
しかし、こんな数字がある。18ホールのごく平均的なゴルフ場は30万坪で、その年間利用者は4万人強。甲子園球場が満員にならない。25万坪の東京ディズニーランドは、昨年度、約1750万人が入場しており、その格差は実に400倍にもなる。遊園地との比較は無理があるかもしれないが、「大衆的」と位置付けるなら、根本から利用方法を考え直す時期にきているのでは、と思う。
その試みの一つとして、子供たちにゴルフ場を開放する「ダンロップジュニアスクール」が、先月、兵庫県の青木功ゴルフクラブで行われた。小学4年生から高校2年生くらいまでの42人。初めてクラブを握るちびっ子から80台でラウンドするものもいた。
5人に1人の割でインストラクターが付き、レベル別に指導したが、子供たちの表情が良かった。最初、おとなしかったのが、雄大な自然の中でプレーをして、帰る時には、生き生きした顔になっていた。
子供の時からゴルフに親しむ。これが底辺拡大にどれだけ重要か、いまさら言うまでもない。野球やサッカー並みに「ジュニアスクール」が各ゴルフ場に誕生したら……陽炎の揺れるフェアウエーでこんな夢が頭をよぎった。
1999年(平成11年)9月4日(土曜日)
30代にゴルフの息吹を
たいていのスポーツは、年齢が上がるにつれて競技人口が減少する。野球やサッカーなら小学生ぐらいで始め、30代になると、第一線から退いていく。ところが、ゴルフは違う。クラブを握る小学生はほんのわずかで、高校や大学でもポピュラーなスポーツとは言い難い。社会人になって、ようやくゴルフが身近になってくる。
職場の先輩や上司に「一度、どうや」と声をかけられるか、あるいは、仕事上の付き合いで、ティーグラウンドに立つ羽目になるか。つまり、ゴルフは年齢が上がるにつれて競技人口の比率が高くなる、と言う逆ピラミッド形なのだ。その証拠にゴルフ業界(コース、練習場、用品メーカー)のターゲットは、40代後半から50代以上。だが、最も上達するであろう30代は見過ごされている。それも無理はない。30代といえば、結婚、子育てと続き、仕事でも先頭に立っている。しかも住宅ローンなどをかかえ、「暇もなし金もなし」なのだ。20代で始めても、やむなくクラブを置くことになる。
そこで昨年10月、関西のゴルフ関係者が集まって「30s GOLFERS CLUB」を結成した。「ハンデは不問、ゴルフに熱心ならいい」が入会条件で、現在、会員は250人余り。レッスン会や割引料金でのラウンドといった特典もあり、ゴルフ不毛の30代に息吹を、と意欲満々だ。同CULBの狙いが功を奏するか。(問い合わせは交野CC・船木氏=0720-92-1101まで)
1999年(平成11年)7月31日(土曜日)
プレッシャーに打ち勝て
ゴルフはプレッシャーとの勝負だ。言い換えれば、重圧があるからこそ面白いし充実感も味わえる。だれにでもこんな経験があるでしょう。最終ホールを迎え、初めて「100を切れそうだ」とか、「80台が出るぞ」と意識した途端、大たたきしてしまった。そのときの悔しさ。しかし、壁にはね返されながらついにベストスコアを記憶した日の晴れ晴れとした気分。話し相手がいたら、自分のプレーを克明に話したくなる。
先週の全英オープン。3打差首位のジャン・バンデベルデ(仏)が最終ホールでまさかのトリプルボギーを記録、プレーオフとなって優勝を逃した。ティーショットを右に曲げたのがドラマの幕開きだった。川に入れたり、バンカーに捕まったりと、ミスショットの連続。テレビでもプレッシャーに押しつぶされていくのがわかった。
予選会を勝ち上がり、難コースの71ホールをほぼ完ぺきなプレーで回った。なのに、最後の1ホールで92年ぶりのフランス人チャンピオンの座も、優勝賞金35万ポンド(約6747万円)も失った。まことにゴルフは無情なゲームだ。では、プレッシャーに打ち勝つにはどうしたらいいのか。
まず➪スコアを数えない➪一球入魂の集中力➪悪いことを考えない───これは常識過ぎるので、少し奇策を。@深呼吸を1分間するAあおむけに寝て青空を眺めるB急所を握ってみる。以上は私がやったものだが、みなさんに効果があるかどうか。
1999年(平成11年)7月24日(土曜日)
もう一度体の向きのチェックを
ゴルフではミスが付き物だ。というより、すべてがうまくいくことがまれなのだ。
例えばミドルホール。ティーショットのドライバーを思い通りの地点に打てるかどうか。セカンドでパーオンする確率はトッププロでも7割しかない。アベレージゴルファーなら5割以下、2、3割といったところか。どちらにしてもグリーンを外すことが多い。さらに、アプローチだが、寄せワンをイメージしても、これがまた、ダフりにトップと失敗の連続。距離感も合わない。パットもしかりである。
ならば、ミスをいかに少なくするか。ショットの技術的なことは個々の問題なので、ここでとやかく言えないが、注意力によって防げるミスもある。その一つがスタンスの向きだ。
アベレージゴルファーのショットは、三分の二が目標より右を向いているという。ボウリングや射撃のように、目標に対して両目と体が正面を向いていれば簡単なのだが、ゴルフの場合、体を横にしてターゲットを狙う。その結果、ボールと目標とのラインに平行に立たず、両つま先のラインを目標に合わせてしまうので、どうしても右に向きやすくなる。そのまま、目標へ打とうとすると、無理に左に飛ばすことになるため、クラブがアウトインの軌道となり、かくして、スライサーが誕生する。
そんな私も、先日、1番ホールで知人から「右を向いていたよ」と言われた。ふちゅういによるミスほど悔しいことはない。向きのチェックを、と改めて思った次第です。
1999年(平成11年)7月17日(土曜日)
心の触れ合いでジュニア育成
先月、兵庫県の旭国際東条コースで世界ジュニアゴルフチーム選手権が行なわれた。50カ国を超す予選を勝ち抜いた14カ国が参加。イングランドが優勝したが、ティーンエージャーたちといえども、真剣勝負の緊張感があって面白かった。
試合の前日、アメリカとフィンランドの選手とラウンドした。ドライバーは当たれば300ヤードショットを見せるし、アプローチ、パットもちゅうちょすることがなかった。大人にない動物的な感覚というか、それがまた、若者らしくてすがすがしかった。
しかし、スコアの振幅は大きかった。ボギーをたたくと、取り返そうとして果敢に攻め、かえって落ち込んでいくケースがあった。コースマネージメントなど経験のいるところで弱みを見せていた。
そのため、試合では、監督がラウンド中4人の選手にアドバイスできた。監督たちは選手の性格に合わせて、おだてたり、叱咤激励したり、プレッシャーを取り除く工夫をしていた。「僕らの仕事は彼らの悩みの相談さ。とにかく、たくさん会話をしないとね」。アメリカのヒンギス・コーチは笑顔でそう話した。
助言はプレーに関してだけではない。クラブハウスの隅で顔を突き合わせて、大学をどうするか、このままゴルフを続けるのか。選手の人生設計についても意見を言っていた。大いなる可能性を秘めたジュニア。多感な世代をサポートするには、どこの国でも心のふれあいが最も大切なのだ。
1999年(平成11年)7月10日(土曜日)
全米の経験が視野広げた
先週、ペイン・スチュワートが劇的な優勝を飾った全米オープンは、文字通り世界に開かれたトーナメントだ。だれでも、というと語弊があるが、アマチュアでも米国でのハンデが1.4以上なら、プロに交じってチャレンジできる。今年は7889人が出場権を得るため、予選会にトライしている。
田中秀道プロもその1人だった。惜しくも予選会を通過できなかったが、帰国すると、同じ週に開催されたよみうりオープンに参戦。最終日、11バーディーでコースレコードタイの62という猛烈な追い上げ。2位タイでフィニッシュした。
そのコメントがよかった。「予選会では80近くたたいた選手でも、一打一打、ひたむきにプレーしていた。その真摯な姿に自分も初心に戻って、頑張ろうと思った」。気持ちがゴルフに表れていた。一挙手一投足にメリハリがあり、ギャラリーの拍手にこたえるしぐさも、実にさわやかだった。サインも、並んだファンすべてに応じていた。全米に挑戦した経験が、田中プロの視野を広げたことは間違いない。
予選会を通過した横尾要プロもそうだ。初日2アンダー、首位から1打差の5位タイという素晴らしいスタートで「YOKOO」の名前を売った。2日目以降、崩れたが、「来年は難コースを打ちのめしたい」と前向きだ。メジャー大会で世界のトッププロと腕を競えば、有形無形のものを得るだろう。チャレンジする若手が、もっと増えてほしい。
1999年(平成11年)6月26日(土曜日)
ショートゲームだけの教室
アメリカにショートゲームだけを教えるゴルフ教室がある。デーブ・ペルツが主宰するアカデミーで、3日間で約3500ドル、宿泊込みなら5000ドル(約60万円)もする。それが予約で満杯の状態だという。
ゴルフでショートゲームがいかに重要か、どんなゴルファーでも知っているだろうがペルツによると、ストロークの中で、アプローチショットやグリーンでのパットなど100ヤード以内のショートゲームが三分の二を占めている。ところが、この部分は「場数を踏まないと、うまくならない」とか言われ、フィーリングや個人の天性で片付けられていた。
学生時代、ゴルフ選手だったペルツは同世代のジャック・二クラスを見て、「こらぁ、かなわない」と方向転換。物理学へ進み、NASAの研究員になった。しかし、グリーンの味が忘れられず、ゴルフを科学的に分析、研究を重ねてショートゲームの理論を作り上げた。
レッスンは講義と実技に交互に1日8時間みっちり行う。レーザー光線を使ってフェースの向きを明らかにしたり、理想的なパッティングのスピードやパターのスイートポイントなど、内容は盛りだくさんだ。
アマチュアだけでなく、米PGAのシード選手が28人、直接指導を受けている。少々の出費がかさんでも、1打スコアを縮めて順位を上げれば元はとれる。まさに「ショートゲーム・イズ・マネー」。プロはどこまでもどん欲なのだ。
1999年(平成11年)6月19日(土曜日)
19歳ガルシア プレー、人柄ナイス
コリン・モンゴメリー(英)が優勝した欧州ツアーのボルボ・チャンピオンシップ(先月31日)で、セルジオ・ガルシア(スペイン)に魅せられた。まだ19歳。今年のマスターズで欧州出身者として初のベストアマに輝き、プロに転向。米国での第1戦のバイロン・ネルソンで3位に入った、今、注目のゴルファーである。
ボルボの最終日、9ホールほど付いて歩いた。1b78.70`。情熱の国からやってきた彫の深い顔にもまだ幼さを残し、どちらかといえば、華奢な現代風の若者だ。しかし、クラブを手にすると、まるで獲物をねらう豹のような精悍さを漂わす。
この日、66で回り通算7アンダーで19位でフィニッシュしたが、2日目の15番までで4オーバー、予選通過は絶望と思われた。ところが、16番からバーディー、パー、イーグルと3つスコアを伸ばし、がけっぷちからはい上がったのだ。ガルシアの魅力はガッツのあるプレーだけではない。プレスルームに呼ばれても、スター気取りの態度はみじんも見せず、話し方に誠実な人柄がうかがえた。
「どんなに成績が悪くても、メジャーチャンプになっても、だれにでもナイスな態度でいたい。今までと同じようにね。いいプロゴルファーになるには、いい人間であることが前提になるでしょうから」。こんなコメントを残すガルシアがアーノルド・パーマー以来の人気者になるのは間違いないだろう。
1999年(平成11年)6月12日(土曜日)
欧米ツアースイング百人百様
ヨーロピアンツアーは見ていて面白い。なんたってプレーヤーが多彩だ。国籍はヨーロッパ諸国はもちろん、アメリカから南ア、豪州、ニュージーランド、韓国、日本と世界各国を網羅。しかも、ビッグネームがそろっている。英国のウーズナム、スペインのオラサバル、ドイツのランガー、南アからはエルス。日本では、友利勝良が孤軍奮闘している。
先月31日までロンドン郊外で行われたボルボ・チャンピオンシュップ。参加プロは156人に及び、全員の世界ツアー優勝回数を合計すると、710勝になった。
3人1組で、朝7時にスタートして最終組のティーアップが夕方4時。それでも夜9時ごろまで明るいので18ホールを十分消化できる。これはファンにとってはこたえられない。13時間にわたってトッププロのプレーが見られるのだから。
そのプロたちが個性的。パーネビクらスウェーデンの選手は足にぴちっとした細いスラックスをはき、ロックバンドのボーカルといったところ。言葉は様々だし、プレースタイルにもお国柄が出ている。
スイングといえば、これが百人百様。日本のプロのようにフィニッシュを大きく奇麗に取る選手ばかりではない。トーナメントの開催地はヨーロッパだけでなく、アフリカ、ロシア、マレーシアと各国に広がっている。画一的なスイングでは、いろいろなコースと天候に対応できないのだろう。ゴルフ人生の屈折を見るようで、これがまた楽しかった。
1999年(平成11年)6月5日(土曜日)
日本のジュニア 幅広くスポーツを
日本のジュニアゴルファー(中高校生)のレベルは高い。昨年も日本アマ選手権などで上位に食い込み、フレッシュな風を送った。実力は欧米のジュニアと比較してもそん色なく、将来を大いに期待するのだが、プロになると、なぜか、伸び悩む選手が少なくない。
その理由を考えると、一つ言えることがある。日本の場合、ゴルフに限らず、野球でもサッカーでも、そのスポーツしかやらないケースが多い。アメリカでは、ハイスクール時代に運動能力のある選手は、陸上をはじめいろいろな競技を掛け持ちする。全米オープン2勝のアーニー・エルスはプロテニスに進むか、ゴルファーになるかで迷ったそうだ。
ゴルフは、ただ単にボールを打つ技術だけを競うわけではない。精神面の鍛錬、コース攻略法、ゴルフの歴史などあらゆるものを詰め込んで、ライバルとコースを相手にする。つまり、知識の豊富さがカギを握っているのだ。
ジャンボ尾崎がプロ野球から、岡本綾子がソフトボールから転向し、ともに最高峰に君臨した。回り道にみえる経歴が、ゴルフの幅を広げ、練習にしても自分なりに工夫し創造性のあるものにしている。
3年前、全米オープンにスタンフォード大の学生として出場したタイガー・ウッズは、「今のしごとは勉学だ」と言ってのけた。私には、この言葉がゴルフ一辺倒になりがちな日本のジュニアへの警鐘に聞こえた。
1999年(平成11年)5月29日(土曜日)
上達への近道 それは素振り
ゴルフはミスのスポーツ──。そんな言葉があるぐらい、ゴルフは難しい。トッププロでもパーオン率は7割で、完ぺきなショットは、なかなか出ない。しかも、コースでは様々な状況と遭遇し、克服すべき関門が山ほどあるのだ。しかし、すべてのゴルファーが「スーパーショットを打ちたい」と、夢見ている。だから本屋さんにはレッスン書がずらっと並んでいるし、雑誌も毎回、同じような技術論を載せており、これがまた、売れている。
だれもが上達の近道を探っているわけだが、簡単で効果的な練習方法がある。それは素振りだ。「素振りシングル」とか言われ、初心者ほど素振りと実際にボールを打つスイングは違う。
ショットの目標は、はるか先の落下点にあるはずなのに、アドレスに入った途端、目の前にあるボールにたたこうとするあまり、余計な力が入り、スイング軌道が乱れ、ミスが出るという結果につながる。
1日5分、3週間でいい。フィニッシュからそのままバックスイングまで持ってくる連続素振り(ワン・ツースイング)をやって下さい。きっとあなたのスイングはよくなる。
もう一つ。トイレでもリビングでも、どこにでもクラブを置き、グリップを握って親しむことだ。日本人がおはしを、欧米人がホークとナイフをうまく使うのは、毎日使っているからで、クラブも手の一部のようになれば、悩みは少なくなるでしょう。
1999年(平成11年)5月15日(土曜日)
「モー理論」で腕前上がるかな
アメリカゴルフ協会によれば、1960年代から一般男子のハンディキャップは、ほとんど変わっていないそうだ。つまり、昔も今も、腕前は同じだという。例えば、マスターズ。毎年、オーガスタで開かれているが、優勝者のスコアは伸びていない。クラブやボールが進歩し、プレーヤーもコースを熟知している。なのになぜ。
それは「スイングはあまりにも複雑な体を要求するからだ」という説がある。ゴルフで真っすぐなボールを打つことがいかに難しいか、クラブを握った人ならご存じだろう。プロでも何球か打てば、必ず右か左に曲がってしまう。
しかし、カナダにモー・ノーマンというゴルファーがいる。ホールインワンが18回、59の最少スコアを3回も記録に残し、ボールを打つことに関しては世界一のプロと自他ともに認められている。
69年、トロントでのエキシビションで、サム・スニードとラウンドした。パー4で240ヤード付近に川があり、ドライバーを持ったノーマンに向かって、スニードが「ここは刻むホールだよ」と言った。すると、ノーマンは「川の真ん中にある橋を狙っているんだ」と答え、その通りのショットを打ってみせた。
こんな逸話を残している彼が言う。「右の手のひらを、左の親指を包み込むように握るのは、元々、グリップ以上の太さを欲しているからだ」。最近、極太のグリップが出回り始めた。モー理論で腕前が上がるかどうか、一度、試されてみては──。
1999年(平成11年)5月8日(土曜日)
マイペースの奥深さ
セルフプレーが増えてきた。キャディーの付かないアメリカンスタイルだが、ゴルフ場としては、人件費の削減ができ、その分、プレーフィーが安くなり、ゴルファーにとってもありがたい、一挙両得のシステムといえる。
しかし、問題もある。前の組に打ち込んだり、カートの事故も発生するし、日常的なことではスロープレーによる“渋滞”が起きる。ボールを探し回るのは仕方ないが、一打一打に時間をかける人がいる。周りの進行状況に無頓着になっているわけで、後ろの組は、ショットの度に待たされ、イライラしてしまう。その揚げ句、ミスを連発、という何とも腹立たしい状況に陥ることになる。丸山茂樹でも、先週、一緒にラウンドした選手のスロープレーでリズムを崩し、よもやの予選落ちをした。
ゴルフでは、ボールを打つまでの一連の動作をスイングルーチン(手順)という。プロや上級者は、どんな場面でもこのスイングルーチンを変えない。平均30秒ぐらいで、同じ手順でオートマチック(自動的)のように打っている。トップの位置やインパクトの形をあれこれ考えていたら、ミスをするし、時間もかかる。ホールの危険地帯、風向きなどを計算したら、あとは迷いなく、オートマチックにスイングしたほうがいいのだ。といっても、慌ててプレーする必要はない。あくまで自分のリズムで早くもなく遅くもなく──だから、ゴルフは奥が深い。
1999年(平成11年)5月1日(土曜日)
“ナビゲーター”に注目
ゴルフはプレーヤーのピークが遅くやってくるスポーツだ。というより、本当のところ、何歳ぐらいが絶頂期なのかよくわからない。米ツアーで勝ちまくっているデービッド・デュバルは27歳。でも、昨年、マスターズと全英を制覇したマーク・オメーラは42歳だし、ジャック・ニクラス(59)は46歳で、6度目のマスターズ優勝を果たした。
チャンピオンがはば広い年齢層で生まれているのはなぜか。それはゴルフは体力と技術だけでなく、経験とメンタル面が勝負に大きく影響するからだ。習得するものが多く、時間もかかる。
だから、21歳でマスターズを制したタイガー・ウッズ(米)は、各分野の専門家をかかえている。スイングをチェックするティーチングプロ。精神面はスポーツ心理学者が担当し、体のケアにはトレーナーがいる。
日本でも、ようやくティーチングプロが注目され始めた。昨年、賞金女王に輝いた服部道子はアメリカ人コーチ、ジョー・ティールと二人三脚で花を咲かせた。中嶋常幸も、井上透コーチの指導を受けており、「ナビゲーター付きの車を運転しているようだ」と話す。日本のプロゴルフ界を「監督のいないプロ野球」と評する声がある。師弟関係があっても、一人で試行錯誤を繰り返し、自分の技量を高めていくしかなかった。そこでクローズアップされたティーチングプロ。地位が確立されるかどうかで、日本のゴルフ界の方向も決まってくる。
1999年(平成11年)4月24日(土曜日)
“少数派レフティー”に期待
野球は左打者が便利だという。球界を代表する打者を思い浮かべても、イチロー(オリックス)、松井(巨人)、鈴木尚(横浜)と、左が並ぶ。なのに、なぜか、ゴルフ界ではレフティーの影が薄い。
その理由の大きな要因はクラブでしょう。新製品が発売されても、左用がないことが多いし、あっても少ない。知人から「このクラブ、使わないからやるよ」なんてことは、まずない。だから、始めた時、仕方なく右打ちにしたケースが多い。プロでもニック・プライスや牧野裕がそうだ。
次にゴルフコース。バンカーの設置など、ほとんどが右打ちを想定して設計しているのはよく知られているが、極めつけは、ティーグラウンドだ。大抵、右のプレーヤーが立つと、左上がりで前上がりになるよう約3度の傾斜がつけられている。これはかなり打ちやすい。ところが左には、前下がりになってしまい、逆にミスショットが出やすい。
こんなに差があるのだから、当然、ゴルフにレフティーが少ない。全体の2%程度といわれている。でも、左利きの人は、元来、器用で、物事に対しての思い入れも強い。左用のいいクラブも市場に出始めた。環境は徐々に改善されつつある。
マスターズでのレフティーは、フィル・ミケルソン(米)の3位が最高成績だ。10日、ミケルソンは13位タイで予選を通過した。“少数はレフティー”がオーガスタの歴史を塗り替えてくれるか。
1999年(平成11年)4月10日(土曜日)
スイングの「静」を大切に
今月8日から米ジョージア州でゴルフの祭典、マスターズが始まる。焦点は昨年の賞金王デービッド・デュバル。先週のザ・プレーヤーズ選手権を制し今季3勝目。賞金は早くも200万ドルを突破したが、四大大会の優勝はなく、初のメジャータイトルを手にするかが見どころだ。
ところで、彼のスイングには特徴がある。超フックグリップで、トップの位置ではクラブフェースが完全に上を向く。このままなら左に曲がるフックボールしか出ないのだが、ダウンスイングで全体を目標へ寄せるように動かして、スクエアなインパクトにし、右へ緩やかな曲線を描くフェードボールを打つ。
これが、今、「21世紀のスイング」と、もてはやされている。しかしである。勝てないで悩んでいたころは、見向きもされなかったのだ。ニック・プライスもそうだった。左サイドが重要とだれもが唱えていたのに、94年、全米オープンを制し「右手を意識している」と言った途端、理論が180度転換してしまった。
つまり、ゴルフのスイングは、それぞれ個性があり、様々な姿を見せる。だから、形をまねるより本質を見極めることが大切だ。<月いちゴルファー>はミスをすると、スイングの「動」の部分を修正しようとする。だが、これは非常に難しい。それよりもスタンス、グリップ、アドレスといった「静」を大切にした方がいい。意識を変えることで、ミスは必ず減るはずである。