第45回:ミスは恐れず、ミスすることを認めるのだ(前編)

「ト

ム・ワトソンは、いいゴルフをしているのに、このところ最終日になると崩れてしまうパターンが続いている。特にパットが入らない。ワトソンほどの選手が、いったいどうしてしまったのか」
と、ある人が私に質問した。

 私が思うに、パットのミスを恐れているのだろう。特に、エゴの強い男性にいえることなのだが、ミスすることを恐れてしまうのだ。これはツアープレーヤーに限らず、ビジネスマンにもいえることで、他人に自分の失敗を見せたくないと思う意識が働いているということなのだ。頭の中で、ショートパットは外すべきものではないと思う意識が強すぎるのだ。

 グレートプレーヤーでさえショートパットはミスするものである。トム・ワトソンは、昔はショートパットをミスしても、そんなに気にかけなかった。実際、ミスしていたものだ。82年にぺブルビーチで行われた全米オープンのときもそうであった。彼は優勝したが、7番ホールで60センチのショートパットをミスした。それを気にかけないでプレーしたから優勝できたのだ。

 しかし今の彼は、優勝争いをしていると、何かの理由で必ずショートパットをミスしている。頭の中で、いつもショ-トパットをミスするのを心配しているようだ。ラウンドしながら、パットをミスすることを探しているようにさえ見える。1〜2メートルのパットを残すことを恐れている。

 もう一つの間違いは、メディア(報道)に対して、それを公言している点だ。ミスパットすることをみんなにいってしまって、それをオープンにしてしまったのだ。「ショートパットに悩んでいる。ストロークの方法が分からないんだ」と。

 ショートパットは、ストロークが悪いからミスするのではない。ミスを恐れることによつてミスするのだ。子供でさえ、老人でさえ、ショートパットを決めることはできる。

 今現在、彼は、自分がショートパットをミスすることを恐れていることを、認めていないのだ。
 このことを認めるまでは、もう一度チャンピオンに戻ることはできないだろう。だが、よい兆候はある。ショットが抜群によいことだ。ウェッジプレーもよい。パッティングに関しても、決して悪くはないのだ。ただ、優勝争いをしているときのショートパットだけがダメなのだ。

(つづく)