第44回:全英オープンチャンピオン ジョン・デイリーのこと(後編)

年の全英オープンでジョン・デイリーは、数多くのプレッシャーをはねのけて勝利を手にした。私のこれまでの彼に対するアドバイスが少しでも役に立ったとしたら、たいヘん光栄なことである。皆さんにとっても、彼の話は参考になることが多いと思う。今週は前回の話の続きである。

 私が彼にいっていたことは、

 「ジョン、君はまだ20代だ。突然に世の中が開けた。重要なのは、これからのジョン・デイリーのストーリー(物語)だ。われわれはすでに、君に関するストーリーをいろいろと目にしてきた。20代後半までのジョン・デイリーのストーリーをみんなが知っている。重要なのは、ジョン・デイリーの今から70歳までのストーリーだ。そして、それに責任を持つことだ。それは、自分自身の仕事なのだ。神は君に、ロングヒッターの能力を授けてくれた。忍耐と、素晴らしい態度は、自分で養っていかなければいけない。350ヤード打てる能力と、素晴らしい忍耐と。態度が、最初からだれにでも備わっているわけではない」

ということであった。

 ジョンは、忍耐強くなることを学ばなければならなかった。より冷静になることも。
 ミスヘの対処の方法もしかり。今後もミスショットからの、よりよい立ち直り方をもつと学ばなければならない。また、他人がいっていることに対することなども。

 彼の言動が、いつも注目され、何かと取りざたされるのはフェア(公平)ではないが、彼だけが350ヤードも飛ばせるのも、またフェアではない。

 スポンサーから2000万ドル(約20億円)もの保証を彼が得られるのは、不公平である。他のプレーヤーが、彼と同じぐらいか、それ以上に練習し、年間2万ドル(約200万円)しか得られないにもかかわらず、だ。

 人生は、必ずしもフェアなものとは限らない。しかし、よいことも悪いことも、受け入れなければならない。それが彼に対するアドバイスだった。

 また、メディア(報道)関係に対しても、接し方を学ぶ必要がある。いい仲間を増やし、自分の夢を分かちあえる友達とともに過ごすのだ。

 彼は、バッドパーソン(悪い人間)ではない。日本のゴルフ雑誌などのマンガに、彼の怒った顔が載っていたが、ふだんの彼は、穏やかな性格の持ち主である。