第43回:全英オープンチャンピオン ジョン・デイリーのこと(前編)

週は全英オープンチャンピオンのジョン・デイリーについて話そう。

 彼はひと言でいつてグッドキッドである。他人が何を考えているかをとても気遣う。
 みんなから愛されることを好む。また、自分も人を愛する。彼は、子供がとても好きだ。チャリティにも、熱心である。チャンピオンになることを愛しており、みんなに対していろいろな素晴らしいことを、積極的に行おうと努めている。全英オープンの優勝は、実に素晴らしい出来事であった。

 しかし、これまでの彼は、人生のしっかりとした哲学を組み立てていなかつた。ボールを遠くに飛ばせるために、忍耐を失うことがあった。

 60ヤードほど彼の後ろから打った他のプレーヤーがバーディを取り、彼がボギーとすると、フラストレーションがたまり、切れてしまうのだ。

 コースも、250〜260ヤードのドライバーを対象に設計されているため、彼のドライバーショットの落下地点は、フェアウエーが狭くなっている場合が多い。したがって、ティショッ卜で、3番アイアンを持つ決意、強い意志、忍耐カ必要となってくる。3番でさえ、260〜270ヤード飛ばせるのだ。彼のアドバンテージは、明らかにティショットである。

 彼は最初、
 「このコースは、ドライバーが打てない。オレのプレースタイルには適していない」
と苦情をいった。そこで私は、
 「他のプレーヤーと違うクラブを使わなければいけないだけだ」
と認識させたのだ。それでもギャラリーは、彼に対して、
 「ドライバーを打て!われわれは、おまえのドライバーショットを見に来たのだから」
という。

 どんなにペイシェント(忍耐)が必要か想像できるだろう。彼自身、観客が何を見たいかをよく知つている。300ヤード以上飛ばせるというのは楽しいことだ。多くのプレーヤーができることではないのだから。しかし、彼は、毎回のティショットで、ストラテジー(戦略)を立てる必要がある。他の選手がほとんどドライバーで打てても、彼の場合はドライバーから4番アイアンまでの選択を、毎回のティショットで行わなければならない。だれも、ディリーのためにコースを造ってはくれないからだ。彼は、ゴルフコースを認めなければならなかった。

(つづく)