第20回:寄せワン狙いはプラス1打をプレーしている

年の全英オープンでのニック・プライスの劇的な逆転勝利について、私もいくつかの質問を受けた。

 「博士、あれは偶然なのか、超能力のような力で起こったのか?」

 最終日の17番ホールでプライスは、15メートルもあろうかというイーグルパットを沈めた。あの勝利を呼び込んだプレーのことである。私の考え方では、それは偶然に起こったものではないということだ。私は、ロングパットでは、ファーストパットが1メートルの大きな円の中に収まればいいというような考え方はしない。そのように考えている人は多いが、私は違った理論を持っている。

 目とマインド(心)が動くのは、ターゲットが与えられて、それに対してである。1メートルという夕ーゲットであれば、目と心はレイジー(怠慢)になってしまうのだ。われわれ(博士と教え子のプロたち)のやり方は、ピンから120ヤード以内に入ればカップインを狙うのだ。ガードバンカーであれ、チップであれ、常にカップインを狙う。20メ-トルのパットはもちろんのことである。

 われわれのオブジェクティブ(目標)はカップインであり、もし外れればそれがたまたまなのだ。したがって、プライスがカップインしたことは偶然ではない。確かに10メートルを超えるパットは確率からいけばカップインすることは多くはないが、それでも小さなカップインを狙うことによって、最初に1メートルに寄せるつもりで打つよりも確率を高めているのだ。

 もっとも、それには狙って外れてもがっかりしない強い忍耐が必要だ。外れたときはたまたまと思い、次のショット(パット)を決めるだけなのである。われわれがやっているのは、この1球にすべてをかけることなのだ。

 寄せワンを狙うことは、2打をプレーしていることになる。もし寄せワンに失敗すれば、3打のプレーとなる。野球のピッチャーは、ただ漠然とボールを投げているわけではない。ホームプレートのコーナーを狙って投げ込んでくるのだ。同じことをゴルフでもするだけである。バスケットボールのシュートでも、バックボードを狙って投げていても、最終的にはリングを狙っているのだ。ゴルフも同じことなのである。