第15回:アドレスしたら頭の中にあるのはターゲットだけ

年にニック・プライスが全米プロ選手権に優勝たとき・人々は「彼は、自分のゾーン(世界)でプレーをしていた」と語った。それに対してプライスは私にこういった。

「博士、それは違う。私がやっていたことは、毎回毎回のショットを、まったく同じルーチンで臨んだことなんです」

私とプライスが取り組んできたことの最も大きなポイントは、考え方のルーチン(手順)を開発することだった。

ティショットでは地上から少し上の木など、何か小さな目標を見つけ、それだけを見つめる。そして、ボールがターゲットに向かって飛んでいくイメージが明確にできるまでアドレスには入らない。そして、アドレスの入り方の、クラブフェースを目標に合わせたり、足を開いたりといった動作を、同じルーチンとしていつも繰り返すのだ。

プライスはアドレスしてターゲットを見つめ、次に視線をボールに向ける。彼は、
「このとき目線はボールに戻っているのだが、ターゲットは見えている」
というのだ。ボールに目線がいっていても、全神経がターゲットに向いているために、頭の中でターゲットの残像が残っているのだ。パットのときも同様である。目標をカップの向こう側の一点のスポットに向け、実際に視線をボールに戻してきても、そのままスポットが頭の中に残っているのだ。

彼のマインドは、小さなフォーカス(焦点)に集中されている。シャープでプリサイス(正確)でエグザクト(精密)である。そしてアグレッシブに(思いきって)スイングするのだ。それでいて頭の中はターゲットしかない状態なのである。

プライスは、「私がしたことは同じ考え方をして毎回のショットに臨むことができたこと」と語っていたが、多くの人は、「ただそれだけですか?ニックがやっていることは、そんなことなんですか?」と疑問を抱いていう。私は、
「ただそれだけ、ではないのです。それがすべてなのです」
と強調する。1ホールでも、同じ考えで攻めてみてごらんなさい。いうのは簡単だが、実行するのは非常に難しいものである。ボールに向かってアドレスしたときに、頭の中にあることは、ターゲットのことだけ。それを毎回続けるのだ。

実際にやってみれば、その難しさが分かるはずだ。なぜそんなに難しいのかといえば、ゴルフはミステーク(ミスをする)ゲームだからである。