第11回:競争を、競い合うことを楽しみなさい

の愛車はレクサス(トヨタ・セルシオ)である。一昔前までは、アメリカのデトロイトが世界の自動車生産を支配していた。そして最近までは、大型車、高級車の生産をリードしていた。

 日本はアメリカを脅威に感じる代わりに競争に挑戦してきた。そして勝とうと挑んできた。最初の挑戦は小型車部門だった。世界一効率的な小型車を生産することを試みた。そしてその競争に勝った。しかし、アメリカはまだ、大型車や高級車の競争には負けていなかった。そこで日本は今度はレクサスやインフィニティなどの高級車でこの分野に打って出た。そして、ここでも勝利を収めた。アメリカはこの競争に勝ち残るために、より質の高いクルマの生産を余儀なくされたのだ。そして、日々向上してきたのだ。これが競争の世界というものだ。

 だから私は選手たちにいつもこう言っている。
 「競争を、競い合うことを楽しみなさい」
 と。

 日本のプレーヤーが、アメリカ人プレーヤーに脅威を感じるのではなく、また、アメリカ人プレーヤーが日本人プレーヤーに対して恐れを感じるのではなく、日本人プレーヤーが上手になればなるほど、アメリカ人プレーヤーも上手にならなければならないし、アメリカ人プレーヤーが向上すれば、日本人プレーヤーもそれに挑んでもらいたいのだ。

 今現在は、ヨーロッパ選手が抜け出しているように言われている。しかし、それに対して、アメリカ人プレーヤーも黙って見てはいないだろう。彼らに対して新たな挑戦が始まるのだ。また、日本からのプレーヤーも、その競争に参加して、トップを取るべく挑戦して欲しい。

 これは歴史なのである。誰かがトップになれば、その他の誰かがトップを狙う。トップになった者は、安泰し、怠慢になり、下のものがトップになりたくて必死に挑戦し、トップにたどり着く、というサイクルだ。なぜそこに競争があるかというと、そこにトップになりたいと思っている者がいつでも多く存在するからだ。

 他人が何といっても自分に信念を持ち、自分を信じていれば自然と実現する道は開けていくものだ。誰かが「それは不可能」といっても、あるいは「もっとリラックスして人生を楽しめよ」とか、「何をそんなに一心不乱にやっているのか、世界の頂点に立つのは大変なことなのだから」などと言われても、チャレンジをしなければいけないのだ。

 大変なことだからこそ、それに向かって自分を信じて目指すことが大切なのだ。ただ単に普通のプレーヤーで終わるのではなく…。