第8回:今までの人生で一番楽しかったことを考えよ

々はよく私にこのような質問をする。
「博士の専門のスポーツサイコロジー(スポーツ心理学)って何ですか?精神分析学者ですか?精神医学者ですか?」

 私の専門のスポーツ心理学とは、運動部の素晴らしいコーチがやっていることと同じことだ。選手に対してメンタルディシプリン(心の規律)を教えるのだ。どのように素晴らしく教えるか、あるいは、プラス志向、ポジティブシンキング……。
 そういった最高峰の考え方を身につけるための心理学といっていい。

 多くのプレーヤーはゴルフスイングに関してはいろいろと矯正することにこだわりはないが、ひとたびマインド(精神面)になるととたんに受け付けない場合がある。何か他人に自分の聖域を侵入されるような感じがするのだ。

 精神医学は、精神に障害がある人に対して治療をするためのものである。病気の人をノーマルに戻すのだ。私は普通の人をさらなる上のレベルに考えることができるようにもっていくのだ。いつでも、最高の心理状態を保てるようにトレーニングをするのだ。

 例えば、今までの人生の中で一番楽しかったことを考えてみるとよい。そしてその心の状態を、毎日いつも持ち続けてほしいのだ。その心の状態になるまでには、家から一歩も外に出ないというつもりでもいいのだ。

 完璧なショットを打って、スプリンクラーのふたに当たってOBになったとしても、ラインに乗っていたパットが石ころで蹴られても、最高の心の状態をキープし続けるのだ。

 ただしこれは非常に難しい。たいていのゴルファーは不運を嘆き、物事をだんだんとネガティブに考え始めるようになってくるものだ。私の仕事は、普通の人に普通ではなかなかできないことをさせることなのだ。

 人間は、できると認めたことは、必ずできる。だが、ほとんどの人はそれを認めようとはしない。なぜなら、自分が最高の心の状態になれることを認めてしまえば、その責任が発生するからだ。最高の状態にしていないときに、それを自分で選んでいる(できるはずのことをできない状態にしている)ことを認めなければならないからだ。ミスを何かのせいにして、心の安定を求めようとする。

 最高の気分でいることも、やろうと思えばできるのであるが、それをしなかった。その代わり、今日はひどい心の状態を選んだ。何に対しても腹を立てることを選んだ。すべてのことにイライラすることを選んだ。パットが外れる気分になることを選んだ。入るような気分の代わりに。悪いショットの後に腹を立てる気分を選んだ。落ち着いて冷静になる代わりに……。