第7回:夢を持ち続けることは、やがて大きな力になる

ット・ブラッドレーはアメリカ東北部のマサチューセッツ州のウエストフォードで育った。冬はとても寒い地域である。彼女はジュニア時代、ゴルフで好成績を収めていない。したがって奨学金も得ることができず、フロリダインターナショナル大学に入学した。ほとんど知られていない大学で、ここでも大きな成功はしなかった。しかし夢だけは捨てなかった。

 「グレードプレーヤーになる」

 彼女は夢を持ち続け、やがてそれを実現した。
 私がブラッドレーに初めて会ったのは、彼女が32歳の時だった。私は彼女に聞いた。

 「あなたは何がしたいのですか?夢は何ですか?」

 この質問は、私が最初に会うすべての選手にする問いかけである。彼らの夢、したいことを知ることなしに、私は彼らを助けることはできないのである。彼らの夢を知ることにより、それに向かっていくには、どのように考えればその夢がかなうか、トライできるかを判断するからだ。

 このときブラッドレーはすでに全米女子オープンをはじめツアーで何勝も挙げていたが、それで満足することはしなかった。彼女は私の目を見てこう答えた。

 「私の夢は殿堂入りすること。賞金女王にも2回なりたいし、メジャーにも何回も勝ちたい。」

 私とブラッドレーは何度もセッションを重ね、彼女は1985年には3勝を挙げ、翌89年には4回のメジャーのうち3回も優勝し、年間5勝を挙げて賞金女王になった。それ以降91年にも2度目の賞金女王に輝き、ついに30勝目を挙げてLPGAの殿堂入りをすることができたのだ。

 私はあのときのことを決して忘れないだろう。それはマサチューセッツ州のリッツカールトンで、ブラッドレーの殿堂入りのセレモニーに出席したときのことである。私と妻がホテルに到着するやいなや、彼女と母親が立って待っていた。キスをしてあいさつを交わしたとき、彼女はいった。

 「博士、話があるのです」

 私が「何だ?」といったら、彼女はこう聞いてきたのだ。

 「われわれは、これからどこに行くのですか?」

 私が驚かされたのは、彼女自身まだ殿堂入りの表彰式も終わっていないのに、すでに次の目標に気持ちが向かっていたことだ。

 自分に夢があり、そのアイデアが鮮明で意思が強ければ、実現のためにすごいパワーが生まれる。

 ブラッドレーとトム・カイトは、私が思うに、誰よりもパッション(情熱)、ハンガー(欲望)、ディザイヤー(願望)を持っている。彼らのハートは特大だ。