第3回:ライバルを手助けするのは正しいことか?

ム・カイトは自分の練習中には、誰も寄せつけず、完全に自分の世界を作り上げる。だが、それが終われば、誰からでも求められれば、助けを与えることを惜しまない。勝負の世界で、ライバルに救いの手を差し伸べることが、果たして正しいことなのか、疑問を持つ人も多いだろう。

 1986年、フロリダでものことである。トム・カイトがデビッド・フロスト、デービス・ラブIII、ブラッド・ファクソンを招待して、私に彼らの前で、マインド、特にプラス思考について話をしてくれと頼んだのだ。出席者の一人がカイトにいったのは、

 「博士があなた(カイト)を大変助けていることは知っている。精神的サポートを受けて、ゲーム内容が向上したことを。でも、なぜあなたは、われわれに対してまで助けを与えるのか。われわれがより向上すれば、あなたを打ちのめすかもしれないのに」

 カイトはそれに対してこう答えた。

 「それは違う。君たちが、私の夢を実現するために、お互いを助け合うのだ。私自身、君たちをエネミー(敵)としてではなく、フェローコンペティター(仲間)と認識している。君たちが、私自身を、次のレベルに押し上げる原動力になるのだ。私は君たちがさらに上のレベルに行くのを助ける。そうすることにより私自身も上のレベルに行かなければいけなくなるからだ。私が向上すれば、また君たちもさらに向上しなければならなくなる。
 この世界には、われわれに十分な賞金とトロフィーがある。私自身、自分がどれほど素晴らしいプレーヤーになれるかにチャレンジしている。レイジー(怠慢) になりたくないのだ。お互いに上達し合うことによって、どれだけ素晴らしいプレーヤーになることができるかのチャレンジが可能となるのだ。お互いがコンペティターとして、ゴルフゲームを楽しむことができる。」

 このような、他のプレーヤーとはひと味違った考え方を、カイトはしているのだ。多くのプレーヤーが、ジェラシー(嫉妬)やエンビー(羨望)を持って、他の選手を敵と見なしている。そして、勝ち負けの結果よりずっと重要な、コンペティション(競争)することの楽しさを忘れてしまっている。

 コンペティションを、チャレンジをエンジョイすることにより、プレーヤーは生き生きし、エキサイトするのである。朝起きて、その日どれだけ向上できるか、わくわくするのだ。このエネルギー(情熱)を呼び起こすために、われわれの内なるエネルギーを利用して、自分を最大限に高めようとしているのだ。これが私のやっていることなのである。