第1回:ゴルフは常にシンプルに考えよ

るプレーヤーは、ゴルフにおいてメンタル面が90パーセント以上を占めるだろうといっている。私は最低でも50パーセント以上はメンタル面が関与していると思う。多くのゴルファーは技術の向上ばかりに気を取られすぎているが、技術、メンタルの両者が調和することがやはり重要なのである。今回この誌上において、メンタル部分の大切さを日本のゴルファーの皆さんにお話できることは非常に光栄に感じている。私の教えているゴルファーや、身近な例を挙げながら、皆さんのメンタル面の向上に役立つ話をしていきたいと思う。まずは自己紹介がてら、私とゴルフの出会いについて話そう。

 私は1949年3月3日に、アメリカの北東部に位置するバーモンド州の人口1万3000人の小さな町に生まれた。ゴルフとの最初の出会いは、隣の家の住人がゴルフ場のキャディマスターであったため、小さなころからキャディをしていたことに始まる。

 11歳のときだった。全英オープン5回優勝のボビー・ロックがコースにやってきた。ロックは、私の町の出身の女性を妻にしたことから、地元のこのロットランドカントリークラブでプレーすることが多かった。私はよく彼のキャディをした。

 ロックについては面白い話がある。彼はパターの名手として知られており、人々はよく彼に、パターをするときに何を考えているかを聞いた。彼はいった。

 「何も考えていない。打って(カップインの音を)聞くだけだ」

 人々は、それだけの答えでは満足せずに聞き続けたが、彼は「打って、聞くだけ」の一点張りだった。

 「だけど、カップインしたかどうかを見たくはないのですか?」

 人々はさらに聞いた。

 「(カップインの音が)聞こえるから、見る必要がないのだ。」

 と、彼は答えた。

 「でも、外したときに、次のパットがどちらに曲がるかを確認することが必要でしょう」

 と、人々はまだ納得しなかった。

 「どうして外したパットを見たいのか。外れたパットなど見たくはない。」

 彼にはそれだけだったのである。パットの名手と呼ばれるロックはパッティングをシンプルに考えていただけだったのだ。

 トム・カイトにしてもニック・プライスにしても、実は彼らの課題のほとんどはこの“ゴルフをシンプルに考える”ことに尽きるのだ。次回は、このトム・カイトのメンタル面の取り組みについて話をしよう。