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昭和25年7月生まれ。追手門学院大学卒業。在学中はゴルフ部在籍。卒業後は旅行代理店に勤務する。昭和59年に大阪市北区にてゴルフ練習場(ゴルフシティ)を開業。練習場経営の傍ら、ゴルフクラブの修理、組み立て、調整に没頭し習熟を深める。
平成14年5月、兵庫県西宮市(阪急夙川駅)にクラブ工房を備えたショップを開業。
趣味はスキー、ボードセイリング、ダイビイグから、最近は大型バイクのツーリングにも夢中。ゴルフハンディは6(茨木カンツリー倶楽部)

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第25回 連載 2005/12/12

クラブフィッティング 25

アイアンクラブ選びの基準について説明します。

1.重心の高さ

ヘッドスピードが遅い人程、重心高の低いクラブを選ぶべきです。

2.ヘッド慣性モーメント

この値はヘッドスピードに関係なく大きいほうが良いでしょう。

3.重心距離

これは単に短いとか長いとかだけではなく、自分にあった最適値を見つけることが大事です。基本的にはヘッドスピードの速い人は重心距離の短いヘッドのほうが良いでしょう。反対に遅い人は短くても長くても大きな問題はないかもしれませんが、きちっと当たってしっかり止まるボールを打つには少し長めのほうが良い結果がでると思います。

現在市販されているアイアンクラブの中ではキャロウエイが最も重心距離が長く設定され、上手くヒットした時は距離も出て球も良く上がりますが、ヘッドスピードの速いハードヒッターには安定してよい結果が出せるかというと少し厳しいかもしれません。一時は多くのプロゴルファーが使用していましたが、結果はあまり良くなかったようです。特にメジャートーナメントで勝った人はいないと思います。面白い統計があります。キャロウエィのアイアンと契約していたプロが他のメーカー契約に変わると突然良い結果を残すことが多かったようです。これは何故かというと重心距離の長いクラブはスイングプレーンを良くするという効果があるため、重心距離の短い(というより自分にマッチした)クラブに換えることによって良い結果に結びつくわけです。日本では昨年谷口プロがキャロウエィからテーラーメイドにクラブ契約を換えましたが、結果は春先から病気等であまりかんばしい結果は出ませんでしたが、後半日本オープンの頃から2連勝し賞金王になり、結果的に予想が当たってしまいました。パワーヒッターだったけれど歳とともに力が衰えてきたプロゴルファーの人達には重心距離の長めのクラブに換えることによって良い結果が出るケースがありますが、シニアのプロゴルファーならともかく若くてパワーのある人にはちょっとマッチングが悪いように思います。

誤解のないようにいいますが、これはクラブの良し悪しではなく、クラブの特徴を説明しているわけで、キャロウエィ社は非常に素晴らしいクラブを開発・製造しているメーカーであることを忘れないで下さい。

第24回 連載 2005/10/22

クラブフィッティング 24

次にアイアンを考えてみましょう。アイアンの打ち易さのスペックで重要なのはヘッドの慣性モーメントと重心の高さになります。一般のゴルファーには重心位置は低いほどボールが上げやすく簡単になります。それではこの5年間でアイアンヘッドの重心高さの平均はどの程度変化したのかというとわずか0.6mmしか低くなっていません。最近は景気が悪いためか単品のドライバー等と比べるとアイアンセットが売れなくなったといわれます。これはアイアンの場合セット販売が主ですので、販売価格が高くて売れていないと考えられていましたが、実際は価格の問題ではなく、ヘッドがあまり進化していないため、買い換えても違いを体感できないがために売れていないようなのです。

では慣性モーメントはどうなっているのでしょう。当然ながらアイアンでもモーメント値が大きくなるほど方向性が向上するのは当然です。では同じようにこの5年間での変化はどうでしょうか。実はこの慣性モーメント値は反対に小さくなってきているのです。ということは新しいアイアンセットを購入する場合、よくチェックしないと新製品といえどもかえって難しいクラブを買ってしまう結果になりかねません。ドライバーを考えると、ヘッド素材がパーシモンからメタル、カーボン、チタンそして大型チタンと順調に進化を遂げていて全てのゴルファーがその恩恵を受けることができてきました。反面アイアンの場合マッスルバックを気に入って使用するゴルファーがいれば、キャビティー、中空ヘッド、あるいはポケットキャビティーを好むゴルファーもいます。どうしてこのようにいろんなタイプのヘッドを使用するかといえば、一定の方向に進化していないからなのです。ですからその中で自分にマッチしたクラブを探す努力をしないといけないのです。

ではどうしてアイアンの慣性モーメントは小さくなってきているのでしょう? アイアンの慣性モーメントを大きくするにはヘッドのトゥ側とネック側に重量を配分する必要があります。しかし最近の製品は重心位置を下げるためにネック部分を細く短くする方向で開発が行われています。ですから慣性モーメントが減少するという結果になります。しかしその割には重心位置が低くなっていないのです。以前フルチタンヘッドがたまに製品化されていました。このフルチタンヘッドは少々大きくしても重量が軽くなり過ぎるため、ソールにタングステン合金等を埋め込んだりしていました。結果重心を低く設定する効果は絶大でしたが、反面慣性モーメント値が非常に少なくなってしまい、非常に上がり易いクラブにはなったけれどミスが非常に大きくなってしまったのです。非常にミート率が良くて非力なゴルファーには良いクラブなんでしょうが一般的には完成度は低く最近ではあまり見かけなくなってしまいました。

それではアイアンヘッドを構造別に考えてみましょう。数値のデータをみれば一目瞭然ですが、キャビティータイプ、中空ヘッドタイプ、ボックス構造タイプ(ポケットキャビティー)の3種類で考えてみます。上がり易さは重心高さで決まりますので平均して最も重心が低いのはキャビティータイプになります。つまり力がなくてボールを上げたい人にはこのタイプが適しています。次にトゥとヒール(前後)方向のミスにはこの3タイプはどれも同じような性能があります。上下方向のミスには若干中空タイプが優れています。女性や年輩のゴルファーにはキャビティーとボックス構造タイプが無難な選択になるでしょう。中空ヘッドは一般的に易しいクラブと思われていますが以外とそうではないのです。ヘッドスピードの速いゴルファーには易しいヘッドになりえますが、重心位置が高めに設定されてしまうため、ヘッドスピードの低いゴルファーには打ちづらくなってしまいます。よくフェース部分にチタンを使ったヘッドが製品化されます。効果としてフェース中心を軽い素材にして周辺に重量を分散できるため慣性モーメントが大きくなると思われているようです。実はこれは必ずしも正しくはなく、反対にこのタイプのヘッドは慣性モーメント値が小さくなってしまうケースが多くみられます。何故でしょう? ヘッドを良く観察すると、フェースの中心はヘッドの中心ではないことがわかります。ヘッドはネック部分も含まれるためフェース中心部を軽くしてしまうとトゥ側が軽くなってしまうため慣性モーメントが減少してしまうのです。ですからフェースにチタンのような軽い素材を使用したハイブリッド構造のヘッドは以外と完成度は低いのです。

アイアンの性能は上記の重心の高さ、慣性モーメントと重心距離でほぼ決まってしまいます。

第23回 連載 2005/10/3

クラブフィッティング 23

長い間講座の更新ができていませんでした。実は5月に突然顔面神経麻痺という病気にかかってしまいました。顔の右半分が全く動かなくなるという症状で、瞬きもできなければ、食事にも不自由するといったありさまでした。まだ通院しており全快までにはもう少しかかりそうですが、日常生活には不自由しないほど回復してきましたので、連載を再開したいと思います。長い間失礼しました。

今年5月に当社で潟tォーティーンの竹林氏の講演会を開催しました。ゴルフ好きの皆様ならよくご存知の名前だと思いますが、クラブ設計の分野では日本のみならず、米国のクラブデザイナーにも大きな影響力があり、過去のように経験と勘に基づいた設計ではなく徹底した数値化による解析でクラブを開発する手法を確立されました。

前回の続きは少し休んで、今回から数回にわたりその講義内容を紹介していき、その後もとのフィッティング講座に戻りたいと思います。

最近のゴルフ界で起こっている現象は若い人達の活躍です。例えば宮里藍、諸見里しのぶ、横峰さくら、又男子では伊藤涼太君など、海外を見ればあのミッシェル・ウィー達の活躍です。ではどうしてこのような10代の人達がこれだけ活躍できるのでしょうか?ゴルフを取り巻く環境の変化で、若いときからゴルフに取り組めるからでしょうか? あるいは指導方法が良くなったからでしょうか? 実はゴルフクラブの進化に大きく影響されているのです。つまりクラブが軽くなってきた恩恵を受けているからなのです。2030年前のスチールシャフトの時代であれば、10代の女性が振れるわけがないのです。若いうちから軽いクラブで練習すると技術を蓄積することが可能になります。そして経験を積むと成績が良くなるのです。昔は体力がないと成績にむすびつきませんし、体力がないときちんとしたスイングができなかったのです。ジュニアだけではなく年輩の人でもボールが飛ばせるし、女性でも簡単に上手くなることが可能です。それほどクラブとボールの進化が大きくなったのです。

昔のパーシモンヘッドの体積はというと約190cc200ccで現在の大型チタンヘッドだと460ccほどにもなります。この大型化によって最も変わるものはヘッドの慣性モーメントです。この数値を増大させるために各メーカーはこぞって大型化を進めてきたのです。

パーシモンヘッドでヘッドスピードが40mのゴルファーがスイートスポットを20mmはずしてショットすると約29ヤードも曲がってしまいますが、現在の大型ヘッドでは約7ヤードほどで、1/3以下になります。これはプロのトーナメントを見ても一目瞭然で、昔のように隣のホールまで大きく曲げることはまれになってきています。昔ならば林に入ったりOB

になったりするのが、ラフやフェアーウエイで止まるようになってしまったのです。

最近あまり練習もしないのにドライバーが曲がらなくなったと感じているゴルファーも多いと思いますが、これは上手くなったのではなくクラブが良くなったためなのです。

よくプロゴルファーは大型チタンヘッドを使わないと言われますが、これは大型チタンがプロゴルファーにあわないというよりも各メーカーが大型チタンはアマチュア用と決め付けて開発した結果であって、プロ用に開発すれば曲がらないというメリットを生かすことができます。ただ大型化にも限界があります。ルールで制限されたこともありますが、現在ではこれ以上慣性モーメントを大きくしてもこれ以上曲がらないクラブにすることが不可能な限界にまできてしまっているのです。ですからこれからは上達するにはクラブに頼ることより、原点に返ってより練習することが必要になってくるかもしれません。

大型ヘッドは曲がりが少ないということはご理解いただいたと思いますが、では飛距離はどうなるのでしょうか? これも上記と同じ条件でテストした場合同じような結果になります。つまり平均飛距離はかなり伸びることになります。

第22回 連載 2005/5/9

クラブフィッティング 22

いままで芯をはずしたショットの場合、ギア効果でサイドスピンが発生すると説明してきましたが、このギア効果とはいったいどういうものでしょう? トウ部分でヒットしたときヘッドは重心位置を中心に右方向に回転しますが、そのときの横方向への移動量が大きいほどサイドスピンが増えることになります。ではどうしてヘッドの横への動きとボールのスピンの方向が違うのでしょうか。

これは図を見ていただいたほうが理解しやすいと思います。仮にボールとヘッドの両方にギアの歯がついていると仮定して下さい。どちらかのギアを回転させると他のギアはそれと反対の向きに回転します。つまりこれとおなじことがインパクトの瞬間に行われているわけで、これをゴルフのギア効果といいます。

第21回 連載 2005/4/18

クラブフィッティング 21

前回の説明で、重心の位置がフェース面より遠いほどギア効果が強く働きサイドスピンの量が増えるということがご理解いただけたと思います。次にアイアンのケースを説明します。アイアンはその形状からみてウッドクラブと比べると、重心の位置は非常にフェース面に近いところに設定されます。つまりギア効果が非常に少なくなるわけです。ですからアイアンクラブにはバルジはほとんど必要ないということになります。もし大きなバルジがつけられていたらどうなるのでしょうか? トウ部分でヒットしたとき、ヘッドは重心位置を中心に右方向に回転するため、ボールは右に飛び出しそのまま真っ直ぐ右方向に飛んでいってしまいます。ギア効果は生じますが、左へ戻すだけのサイドスピンは発生しません。ヒール部分でヒットしたときはその反対になります。

初期のメタルヘッドは強度を確保するためにフェース面が厚くなっており、そのため重心位置は当時のパーシモンヘッドなどと比較すると非常にフェースに近いところに設定されてしまいます。つまり重心深度が浅くなるわけで、結果バルジは少なく設計されるわけです。初期のメタルヘッドのバルジが少ないのはこのためなのです。しかし最近ではヘッドの製造技術も進化し、素材もチタンなどが採用され、重心位置をある程度自由に設定することが可能になってきました。400ccを超えるようなヘッドで非常に重心深度が深く設定された商品もどんどん開発され市場にでてきています。この場合、重心距離との兼ね合いで上手くバルジを設定する必要があります。

第20回 連載 2005/3/30

クラブフィッティング 20

今回の説明は言葉では説明しにくいので、図で理解していただきたいと思います。

インパクトでスイートスポットをはずした場合の横への動きを説明したものです。

ヘッドの重心位置がフェースより遠い(重心深度が深い)ほどインパクトポイントの横方向へのずれる半径が大きくなります。つまり重心深度が深いほどボールのサイドスピン量が増えるということです。

芯をはずしてショットしたときのフックスピンやスライススピンの量はヘッドの重心位置を中心にヘッドが回転し、そのときの横方向への動きの量でほぼ決定されます。

つまりトウ部でヒットしたとき重心深度の深いヘッドほどサイドスピンの量が増大しますのでサイドスピンをコントロールするにはより大きなフェースバルジが必要になります。

その反対に重心深度が浅いヘッドほどサイドスピン量が減少しますので、より少ないバルジにする必要があります。ヒールショットの場合は反対の結果が生まれます。

年配のゴルファーであれば、パーシモンヘッドが全盛の頃、ハードヒッター用にディープフェースでフェースインサートにアルミ等を使用して重心深度を浅く設定し、尚且つバルジのアールを大きいクラブが沢山存在していたのをご存知だと思います。上級者が使うクラブほどディープフェースでバルジが大きいのが定説になっていたようですが、これは全く間違った設計のクラブだということがおわかりだと思います。こんなクラブを使えば芯でショットした場合以外はより曲がりが大きくなるばかりで全く使い物になりません。

この頃はまだ重心深度とフェースバルジの関係が十分に理解されていなかったのです。

第19回 連載 2005/2/7

クラブフィッティング 19

ホリゾンタルフェースバルジを理解するうえで最も大事なのは、その働き方と最適なバルジをどうやって決めるかということにつきます。

まず最初にバルジの働き方について説明していきます。下の図を参照して下さい。

この図は一般的なバルジの働き方を説明したものです。しかしながらより深く理解するためにはこれだけでは不十分です。図の3つのインパクトポジション(トゥ、センター、ヒール)はクラブヘッドの軌道が目標に対してスクエアで尚且つフェースポジションもインパクトでスクエアなときの説明です。実際にはスイング軌道やフェースアングルやボールのインパクトの場所の違いによってボールの飛びはさまざまに変化してしまいます。

後ほど詳しく説明していきますが、このバルジとヘッドの重心位置がボールの飛びとスピンに大きく影響することを理解してほしいのです。

まずボールをトゥ部分でヒットしたときですが、フェースバルジの丸みのためトウ部はすでに若干目標方向より右に向いています、そしてインパクトの衝撃でトウ部は後退しヒール部が前進するような回転の動きが重心位置を中心にして発生します。このためボールは目標よりも右方向に飛び出してしまいます。しかしこのインパクトでの回転運動がボールに反時計回りのサイドスピンを与えること(これがギア効果ですが、後で図で解説します)になり、右へ飛び出したボールをフック回転でセンターに戻すような弾道を矯正するように働きます。

第18回 連載 2004/12/27

クラブフィッティング 18

ホリゾンタルフェースバルジについて詳しく説明された文献類は日本では殆どみかけません。そのためか、このバルジについては非常に誤解されているケースが多々ありますので、解説していきたいと思います。

まず第1に、適切なバルジはショットの際のサイドスピン量を増加させたり減少させたりするという考えです。正確にはこれは少し違います。もしウッドヘッドにバルジがなければボールとヘッドとで発生するギア効果(後述します)によってヘッドのトゥ側でヒットされたボールはおおきなフックスピンがかかり左へ大きく曲がってしまいます。反対にヒール側ですとスライススピンで右へ飛んで行ってしまいます。スイートスポットでヒットする割合は現実には非常に少ないわけですから、これでは全くゴルフにならないでしょう。

芯をはずしてショットしたときの予想外の曲がりを修正するためにバルジがつけられるわけです。

第2は上記のように芯をはずしたショットをした場合、仮にトゥ側でボールをヒットするとヘッドはインパクトの衝撃でトゥ側つまり右に回転します。ヒールショットの場合はその反対です。その際のヘッドの回転はシャフト軸を中心にヘッドが回転するというものですがこれは違います。スイング中のヘッドの回転運動はシャフト軸中心に起こりますが、インパクトでは正確にはヘッドの重心位置を中心にローテーションの動きが発生するのです。このヘッドが回転する量は慣性モーメント値によって変わります。

第3はメタルヘッドには殆どバルジは必要がないというものです。当然ながらメタルヘッドにもバルジは存在しますし必要なのです。ただ昔のパーシモンヘッドと比べると構造上重心位置がよりフェース面に近いところに設定されますので、少ないバルジでOKなのです。後ほど詳しく解説します。

第4は以前に米国でよく説明されていましたが、このバルジは飛距離に大きく影響しているということです。つまりバルジの丸みがないヘッドは距離がでないというものです。

これはフェースが平らなものよりも丸みがあったほうがボールとの接点が小さくなり、よりヘッドのパワーをボールに伝えられるというものです。正論のようにも思いますので、この考え方に反論するつもりはありませんが、その後スイングロボットが開発されテストした結果は両者に距離の差はほとんどないことが実証されたようです。

次回は図で詳しく説明していきます。

最近このフィッティング講座を見られている方から、内容が少し難解すぎるのではないですかとご指摘を受けました。又本当に知りたいのは自分にとってどのクラブが最適かなので、そこを中心に説明してほしいとのことです。最もなご指摘だと思います。自分としては一般のゴルファーの皆様のために極力理解しやすいように説明してきたつもりですが、実際には本職のクラフトマン達でさえ頭をひねるような内容もあったようです。しかし基本的なことを理解していただかないとクラブフィッティングはできませんので、もうしばらくお付き合いをお願いします。ただ説明はより理解しやすいように努力していきます。(反省)。ひととおりの説明が終了後、ゴルフクラブの四方山話に入っていきます。大東氏の四方山話を拝見しておりますが、非常に興味ある内容で感心しております。このフィッティング講座でも取り入れていきますのでこ期待下さい。

ご質問などがあれば当社のホームページにアクセスしてください。

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第17回 連載 2004/12/13

クラブフィッティング 17

今回からは少しフェースバルジについて説明していきます。バルジとは何でしょう?

昔、パーシモンクラブを修理・調整されていたクラフトマンならばよくご存知なんですが、最近のゴルフ専門誌などでは殆ど取り上げられることがないので一般のゴルファーには聞きなれない用語かもしれません。特にウッドヘッドの素材が金属になってからはほとんど問題にされなくなってきたようです。しかしこのバルジは素材がウッドであろうがメタルであろうが弾道に非常に大きな影響を及ぼすスペックなのです。以外とプロのクラフトマンでもよく理解できていないようですので、もう一度勉強してみたいと思います。

正確にはホリゾンタル・フェースバルジと言いますが、フェースのトゥ側からヒールにかけての水平方向の丸みのことです。通常、重心位置の関係でウッドタイプのヘッドにのみ見られアイアンには存在しません。これはボールの方向性に影響を与えますが、特にサイドスピンのコントロールのために存在します。数値はインチアールで表示されます。一般的には10インチアールが理想的といわれていますが、ヘッドの重心位置によってこの理想値は変化します。

第16回 連載 2004/11/22

クラブフィッティング 16

重心位置について説明してきましたが、ご理解いただけているでしょうか?

できる限り図などでやさしく説明してきたつもりですが、本職のクラフトマンやクラブフィッターの方達であればいざしらず、一般のゴルファーの皆様には少し難しかったかもしれません。今後はもう少し分かり易く説明していきたいと思います。

それでは重心位置の理想的な位置とはいったいどこなのでしょう? 通常はクラブフェースのど真ん中と考えるのが一般的かもしれませんが、クラブをデザインする場合どのようなレベルのゴルファーが使用するかによって重心位置の場所が決定されます。一般的に初心者からアベレージゴルファーではフェースのセンターラインより先、つまりトゥ寄りでインパクトする傾向にあります。このようなゴルファーのために米国では1/16インチ(約1.6mm)程重心位置をトゥ側に設定したクラブをよく見かけることがあります。残念ながら日本でそのように設計されたクラブはあまり存在していないようです。試打をするときにフェースにインパクトラベルを貼ってみると自分のインパクトの位置を知ることができますのでぜひ試して下さい。一般のゴルファーの場合打点がなかなか安定しないのですが、

10個程度ボールを打つとだいたい傾向がつかめてきます。センターよりもトゥ側でヒットする傾向があれば、フェース面の長さ(トゥからヒールの長さ)が長く高さが低く、そしてホーゼル(シャフトを接着する部分)の長さが短いクラブを使用すれば好結果が期待できるでしょう。

反対に、上級者やプロレベルのゴルファーになるとセンターより少しヒール寄りでヒットする傾向が強まります。このレベルのゴルファーが好むのはトラディショナルタイプのヘッドになります。通常このタイプのヘッドは重心位置が少しヒール寄りに設定されているからです。昔のクラブ設計者はその当時この重心位置という概念はよく理解されていなかったようで、サンプルクラブを製造して実際にボールを打ってのトライ&エラーの繰り返しで作業をしていたようです。当時のクラブはブレードの長さが短く、高さも高く、又ホーゼルが非常に長く設計されていましたが、このようなクラブは総じて極端に重心位置がヒール寄りで高い場所に設定されますので、非常に難しいクラブになってしまいます。

しかし現在ではこのような昔風のフラットバックアイアン形状でも最適な位置に重心位置を設定することが可能ですので、一般のゴルファーでも使用可能になってきています。

プロゴルファーのクラブを見る機会があればぜひフェース部分を注意して観察してください。打点が非常に安定していますので、ボールをヒットしている場所が残っているはずです。総じて若干ヒール寄りでショットしているのが理解できると思います。

もし自分にとってベストなヘッドを見つけたとしても、最適にフィットさせて組み立てることができなければ良いクラブにはなりません。

いままでの説明で、この重心位置の測定方法、弾道にどのように影響するのか、垂直方向と水平方向の変化が実際のプレーにあたえる影響、又重心位置をはずしてショットしたときの影響などがお分かりいただけたと思いますので、重心位置の説明はこのぐらいにして次に進みたいと思います。

第15回 連載 2004/10/25

クラブフィッティン 15

今回は慣性モーメント(MOI)の説明をしていきます。

クラブヘッドを評価する際、この慣性モーメント(MOI)という用語が頻繁に使用されます。ボールをヒットした時スイートスポット(重心位置)でヒットするとヘッドの捩れは発生しませんが、重心位置を外してヒットすると、ヘッドの重心位置を中心にヘッドが捩れる(回転)動きが起こります。これに対する抵抗力がMOIと考えて下さい。

ミスヒットしたとき、MOI値が大きい程インパクトでのエネルギーのロスが減少し、より遠くまでボールをキャリーさせることが可能です。このMOI値が大きければ良く飛ぶクラブと勘違いされている場合がおおいのですが、この値に関係なく、芯をはずしたショットは必ず飛距離の減少が発生することを忘れないで下さい。

大事なのはクラブヘッドを評価する際、この慣性モーメントが全てではないということです。大きなMOI値のヘッドを設計することは可能ですが、それによって重心位置が高くなってしまうと、これもまた使用に適さないクラブになる場合があります。ここにヘッド設計の難しさがあります。

この値は専用の測定器にヘッドを固定して回転させたときの力を測定するわけですが、一般的には左右、上下、前後の3方向の測定でほぼヘッド性能が決定されているようです。

以外なことですが、このMOI値はパターの設計の非常に重要な要素になっています。

実際のテスト結果をビデオで見たことがありますが、約5mの距離で普通のパターで1インチトウ側に芯をはずしてボールをヒットした時、距離が届かずボールは右側にそれましたが、MOI値の高いパターヘッドの場合は難なくカップインしました。この程度の距離のパッティングでもこれだけの差がでるのには正直驚きました。皆様のパター選びの参考になれば幸いです。

第14回 連載 2004/10/11

クラブフィッティング14

ヘッド形状による違いを考えてみましょう。ヘッド形状は大きく分けて2つに分類されます。まず古くからあるコンベンショナルタイプ(フラットバックとかマッスルバックとも呼ばれます)と周辺に重量配分されたヒール・トゥ・ウエイティングとかペリメーターウエイティングとも呼ばれる(一般的にはキャビティーバックデザインと称されますが、中空タイプも含みます)タイプです。両者とも重心位置はフェースセンターにありますが、キャビティータイプのほうが質量が後方に配分されるため重心の深さはより後方になります。キャビティータイプの方がミスヒットしたときにヘッドが捩れる動きが減少するため

により多くのエネルギーがボールに伝えられ、コンベンショナルなヘッドと比較すると飛距離のロスの減少、正確性やフィーリングに好結果が生まれます。

しかし、だからといってキャビティーバックのヘッドのほうが間違いなく優れているとは断言できません。ヘッドデザインによって性能は大きく変化するからです。

以前テレビのコマーシャルで見ましたが、スイングロボットで同じ番手の両タイプのクラブを同じだけ芯をはずしてショットする実験をしていました。池に囲まれたグリーンに向かってショットしますが、キャビティータイプのヘッドはピンの近くにオンしましたが、コンベンショナルタイプのクラブではグリーンに乗らずに池の中に入りました。メーカーの宣伝とはいえ現実にはこれほどの劇的な違いはないと思いますが、多くのゴルファーにとってよりゴルフを易しく又楽しくさせる選択であることは間違いありません。

これはクラブヘッドの慣性モーメントの違いが大きな理由になります。

第13回 連載 2004/9/27

クラブフィッティング 13

重心位置とミスショット(英語では通常オフセンターヒットと呼ばれます)の関係をもう少し考えていきます。当然ながら芯(重心位置)をはずしたショットは飛距離、弾道、方向性及びフィーリングに大きな影響が発生します。スイートをはずせばインパクトでの力が弱まるわけですから距離が減少してしまいます。スイートエリアをはずす度合いが大きいほど飛距離の減少も大きくなってしまいます。実際のテストで実証した飛距離ロスの度合いが図で示されていますので参考にして下さい。もちろんこの度合いはロフトの影響を受けますので番手によって当然ながら変化します。例えば1インチ(2.54cm)芯をはずしてショットしたときの1番アイアン(ロフト約17°)と9番アイアン(ロフト約46°)を比較してみましょう。

もちろん結果は1番アイアンのほうが非常に悪くなります。これは1番アイアンのほうが長くて軽いためスイングのスピードが速くなり、インパクトのボールに与える衝撃力は9番アイアンの約10倍ほどにもなります。その結果ヘッドは重心位置を中心(シャフト軸ではありません)に捩れる動きが大きくなり、飛距離、方向性やフィーリングに非常に大きな影響が出てしまうのです。

反対に9番アイアンではどうでしょう。弾道に若干の影響はでますが、飛距離や方向性はそれほど悪くはならないのです。つまりロフトが少ないクラブほどスイートエリアでショットすることがいかに重要かがわかります。一般的にアベレージゴルファーの多くはクラブのトウよりでヒットする傾向が多いようですが、このようなゴルファーにはロングアイアンのかわりにユーティリティークラブやウッドクラブのほうが懸命な選択になるはずです。

第12回 連載 2004/9/13

クラブフィッティング12

いままで説明してきた重心位置は他にクラブのライ角度にも若干の影響を与えます。

これはヘッドの重心位置がシャフト延長線上に位置していないため、スイングをすると遠心力の影響で、シャフトの延長線上に重心位置が移動する動きが起こり、結果としてヘッドが下に向くトウダウンといわれる現象が発生します。正しくはトウダウンワードモーションとかボウダウンと呼ばれています。この結果、図のようにクラブのライ角がフラットになる作用が起こります。これは短いクラブよりも長いクラブのほうが影響を受けやすくなりますが、これには2つの理由があります。まず長いクラブほど通常スイングスピードが上昇するためにより遠心力がかかるためで、次に長いクラブほどシャフトの硬さがよりフレキシブルになるためです。もちろんこのボウダウンワードにはヘッドの重心距離やヘッド単体の重量も関係してきます。ヘッド重量はクラブが短くなるほど増加していきますので、重量だけで考えると短いクラブのほうがより影響を受けやすいように思われますが、実際にはクラブの長さとシャフトのフレックスのほうがより大きく影響してきます。

現実にはショートアイアンにおけるこのダウンワードモーションはほとんど発生しません。

この現象はライ角度に影響を与えるため、フィッティングには非常に重要で、数値で示された角度で判断するのではなく実際のショットの状態を判断して調整するプラクティカルフィッティングが必ず必要になります。詳しくはライ角度のときに説明していきます。

第11回 連載 2004/8/30

クラブフィッティング11

前回ホーゼルオフセット(グース度)の説明で、ロングアイアンほどグースの度合いを大きくしていくことによってインパクトでのボールとフェースのコンタクトポイントが一定すると説明しました。それ以外にもこのグースネックの形状にはメリットがあります。ご存知のようにクラブはロフトが減少するほど打ちにくくなっていきます。つまりボールがつかまり難いとよく表現される現象です。ミドルアイアンぐらいまではなんとか上手く打てるゴルファーでもロングアイアンになると右へ飛び出す力のない弾道になってしまいます。それを気にし過ぎると今度はフェースがかぶって入り、結果少ないロフトがより減少するために左へゴロのような弾道になってしまいます。もともとロングアイアンは長くてロフトが少ないために現実には相当のヘッドスピードがないと本来のロングアイアンの弾道を生み出すのは困難なのです。最近のクラブは低重心でワイドスイートエリアに設計されていますので、従来よりも格段に打ちやすくなってはいますが、ロフトが減少するにつれて難しくなっていくことには変わりがありません。

グースネックとはフェースのリーディッグエッジがシャフト軸に対して後ろ側に後退していきますが、この結果クラブの重心位置もグース度が強くなるにつれて同じく後退していきます。ヘッド単体の重心位置は変化しませんが、クラブとしてシャフト軸を中心とした重心位置は変化していきます。これは重心アングル(重心角)が大きくなることになります。前に説明しましたがクラブをテーブルの上に置いた時、フェースの向きが上を向くほどヘッドがインパクトでターンしやすくなると説明しました。つまりグース度が大きくなればヘッドがターンしやすくなるために、打ちやすくなるわけです。

一般的にはヘッドスピードが不足しているゴルファーにはロングアイアンほどグースがついたクラブを選択するのが賢明です。もちろんゴルファーの中にはそれほどパワーがなくてもストレートネックのロングアイアンを上手く打てる上級者もたくさんおられますし、プロのロングヒッターではロフトが少なくても高い弾道を打ち出すパワーがあるためにグースネックのクラブでは左へ飛び出すミスが出やすくなり、ストレートネックのクラブが好まれます。ショートからロングアイアンになるにつれ少しずつグースネックの度合いが増していくように設計されたものはプログレッシブオフセットと呼ばれ、すべてのゴルファーにマッチするとは限りませんが、理にかなった設計のクラブだと思います。

このヘッドの重心位置はボールの弾道に少なからず影響があるということを理解いただけたでしょうか。フェースの重心位置の上下の関係は、重心位置が低いほど弾道は高くなる傾向になり、その反対に高くなれば弾道が低くなります。この重心位置の縦の位置はわずか1/8インチ(1インチは25.4mmですから約3.175mmになります)の変化でロフト2度

の変化に等しくなります。もちろん他のスペック、例えばヘッド重量、ロフト、クラブ長さ、等が同じで尚且つインパクトの打点が同じ場合のことです。

繰り返しになりますが、一般的な重心位置に関するフィッティングでは重心が低いほどよりソリッドなショットがし易くなるのは間違いないでしょう。