POINT15
リストを柔らかく使うための握り加減は、歯磨きチューブで習得する
リストワークを効率よく果たすには、グリップの握り加減が大切と言うモー・ノーマン 体全体の並行移動でリストが柔らかく使える
前回、ボールを飛ばすために必要なのは利き腕の動きであって、実にその94%を占めているといった。飛ばすための原動力は、スイングによって体が作り出すエネルギーではなく、リストワーク、リストの動きが、その大半を占めるのだと言った。したがって利き腕のリストの動きが、大変重要になってくる。ハンマー打法の極意ともいえるものである。
リストワークを効率よく果たすには、まずリストが柔らかく使えなければならない。そのためにはグリップの握り加減が大切になる。ハンマー打法では、通常のグリップよりも太いグリップを勧めている。それは太いグリップだと、手の平で握ることになり、強く握り過ぎることがないからだ。同じ重さのものでも柄が太いものと細いものでは、太いもののほうが軽く握れるものなのである。軽く握ることによって、リストが柔らかく働き、リストコックが最大限に作用する。
さらにリストを柔らかく使うための方法として、大切なのが体重移動だ。体重移動というと、従来の感覚では飛距離を生み出すためのパワーを作るように思いがちだ。ところがハンマー打法での体重移動は、あくまでもリストを柔らかく使うために必要とするものなのだ。しかもこの体重移動は、従来のように回転移動ではなく並行移動となる。バックスイングでは体全体を回転させるのではなく、下半身を固定したまま、腰から上を右へ移動させる。ダウンスイングでは逆に左へ移動させる。これがハンマー打法がいうところの、体重移動であって、決して回転移動ではない。
そこで、リストを柔らかく使うための体重移動だ。まずバックスイングの始動では、クラブヘッドをアドレスの状態に保ったまま動かさずに、体全体を右へ移動させる。つまりクラブのヘッドは、体の動きよりもワンテンポずれて始動することになる。こうすることによって、バックスイングでグリップに力が入るという人は、一度試してほしい。
ダウンスイングでも、クラブはグリップから先に下ろすのではない。右から左への体重移動によって、上体も元の位置に戻ってくる。それに連れてリストも柔らかく保たれたまま下りてくる。そしてインパクトの直前で、両腕、特に利き腕をまっすぐに伸ばしてやれば、最高のヘッドスピードが得られるのだ。リストが柔らかく保たれた状態だからこそコックもできヘッドは走るのであって、固いとヘッドは走ってくれない。
古山プロが薦める、歯磨きチューブを利用した握り加減
スイング中、グリップとリストは柔らかく保つ。これがヘッドスピードを速めるための秘訣でもあるわけだ。
ハンマー打法の実践者である古山聡プロは、
「ダウンスイングで体全体を左にシフトする際、グリップに力が入っていると、右肩にも力が入り、その分右肩が前に出てしまうのです」そして、「結果的にクラブがアウトサイドに振り下ろされたり、インパクトのはるか手前でリストの柔軟性がなくなることにつながります。そのために軌道は狂い、ヘッドスピードもあがりません」と、強く握ることの弊害を説く。さらにクラブを軽く握ることによって、「バックスイング中に、手首のコックが自然発生し、手にクラブの重みを感じることもできるようになります。その結果、スイングのテンポが速くなり過ぎることも防げます」と強調する。
そんな古山プロがお勧めの握り加減の習得法は、クラブではなく、徳用サイズの歯磨きチューブを利用してのものだ。「握り加減というのは、アマチュアの人が自分でチェックするのが難しいところです。そこでチューブをクラブに見立ててグリップし、スイングしてみるのです。このようにすると、バックスイング中に強く握ったりすれば、その瞬間に手の感触が変わり、グリップ圧の変化を自分で感じ取ることができます」というわけだ。そして、「チューブの中身を出さないように心掛けながらバックスイングすれば、緩くグリップしたままスイングするコツも自然に覚えられます」ということで、そのコツをつかまえれば、「金づちでクギを打つときの要領で、クラブを持った手首の方が勝手に仕事をしてくれる」というのだ。
リストを柔らかく使うための体重移動。バックスイングの取っ掛かりは、ヘッドを動かす以前に体重全体を右に移動させる。ダウンスイングでは、逆にクラブより先に左へ移動させる。 グリップは太いほうが手の平で握れて、強く握り過ぎることがない。