POINT11
ヘッドスピードは、体の回転やねじれによって生まれるものではない
モー・ノーマンのトップオブスイング。下半身、特に右は不動の状態を保ち、体を回転させるのではなく、体重を直線的に右へ移動させている。 バックスイングは体重の平行移動で、回転運動ではない。
これまで何度となく言ってきたが、ゴルフのスイングというのは回転運動ではない。
ハンマーでクギを打つとき、だれが体の回転を意識するだろうか。クギを打ちすえた瞬間、ハンマーの打球面はクギの頭と平行になっているものだ。そうでないと、まっすぐに打ちすえることはできない。
ボールを正確に捕らえるための基本的なことは、打球面をどれだけスクエアーに入れられるかにある。体の回転を意識したスイングだと、回転に見合っただけの、手首の返しが必要になる。返し方が足りないとスライスするし、返し過ぎると引っかけたり、フックしたりしてしまう。
だが金づちでクギを打つときのように、体の回転という意識を取り省いてやればどうなるだろう。手首を返すといった、当たり外れのある難しいプロセスが不要になる。それだけスイングそのものが易しくなってくるのだ。
だからこそハンマーを打つときの要領を、ゴルフのスイングに取り入れてほしいというのだ。ハンマーを打つとき、大半の人は手に持ったハンマーを直線的に振り上げ、そして直線的に振り降ろすはずだ。肩を90度まわしてとか腰を45度まわすなんてことは考えないのが普通だ。そのためにハンマーの打球面はまっすぐに入ってくることになる。
バックスイングでは、肩をまわそうとか、腰をまわそうなんてことは、一切考えることは要らない。むしろスエーするくらいの気持ちで、体重を直線的に右に移動させるようにする。それでも実際の動きとなると、手の動きや、手で持ったものの先端部は丸く円運動をしているものだ。
トップでのグリップの位置は右肩までで十分だ。
もちろん下半身は固定させる、ということを忘れてはならない。とくに右膝は不動の状態で保ち、左足のヒールアップは避けるべきだ。
この要領をつかむために、右手一本でクラブを握り、左手をだらーんとしたまま、体重を右に移動させながらクラブを上げてみる。上げる要領は、ハンマーを上げるのとまったく同じで、右手で上げてやればよい。ほんの少し肩のラインも動くが、これは意識して故意に動かせたものではない。さらに余分な力を入れなくても、その人にとって一番上げやすいところにクラブを上げることができる。
体重を右膝の上くらいまで移動させたとき、グリップは右肩のあたりにあるはずだ。この状態を保ったまま、左手をグリップに添えてみる。このとき初めて、肩もまわってくる。
でもクラブを上げるのは手であって、肩はあくまで従でしかない。ひょっとすれば左の肘はまっすぐに伸びず、心持ち折れ加減になっているかもしれない。だからといって、肘を伸ばす必要はない。なぜなら左肘の曲がりこそ、その人にとっては自然な形であるのだから。
それをアドレスのときに作った両腕の三角形を保てなどと言われたために、無理に伸ばそうとなどとすると、力みが入ってくることになる。またグリップの位置をそれ以上に高く上げようとすると、体の回転が要求される。だからグリップは右肩の高さで十分なのだ。
利き腕を最大限働かせてこそヘッドスピードは上がる
こんなグリップの高さで、果たして飛ぶのだろうかと疑問に思われるかもしれない。つまりヘッドスピードが出るかといった疑問だ。
しかし考えてみてほしい。ヘッドスピードというのは、体の回転やねじり上げで出すものではないのだ。利き腕を最大限、使うことによって生まれるものなのだ。右利きの人なら、右腕の動きとリストの開放によって生まれるのだ。
ハンマーを打つとき一番力強く動かせているのは、利き腕であるはずだ。ゴルフのスイングだからといって、それに違いがあるわけではない。したがってグリップも、右肩あたりの高さで十分なのだ。
それをもっと大きくすれば飛ぶだろうと錯覚して、右肩以上に上げると、下半身も動かさなければならなくなってくる。そうなると体全体のバランスを取りながらのスイングとなって、タイミングやリズムが不可欠になってくる。練習量の少ない一般ゴルファーには、難しいことだ。
小さなスイングながら、ハンマーを打つときのリストワークで、ミート率を上げることができれば、スイングアークを大きくする以上にヘッドスピードは上がるのだ。
下半身の動きを止めて、体重を移動させるイメージ練習。右手一本でクラブを握り、ハンマーを上げるのと同じ要領で上げてやる。肩は少しひねられるが、意識したものではなく自然の動きだ。グリップの位置も右肩あたりで決して高い位置にはこない。これくらいの高さの方が、右腕を無駄なく無理なく最大限働かすことができる。