POINT10
具現者、モー・ノーマンのスイングが教えるもの
右手をハンマーを握るときのように、手の平で深く握るのは、肘から手首までを一体化させるようにして、リストの余計な動きを防ぐため。 数々のレコードを誇る伝説の人、モー・ノーマン
ゴルファーというのは、得てして理論に走りやすく、グリップはこのように握らなくては。スタンスの向きはこうでないと。スイングの軸をずらしてはいけない。肩はここまで回さなければ飛ばない。左腕のリードがないと。それらのチェックポイントを数え上げれば、頭がこんがらがるだけで、きりがありません。
そんな複雑なことをすべて忘れて、もっとシンプルにというのがハンマー打法の考え方です。そして「ハンマーでクギが打てれば、ゴルフはシングルになれる」というものです。
このシンプル打法の最大の具現者が、カナダの天才ゴルファーで世界一のボールストライカーと言われるモー・ノーマンです。あまり聞き馴れない名前ですが、カナダツアーを中心にアマチュア時代を含めると40勝以上をあげ、コースレコードも40以上。59という驚くべきスコアも3回記録している。、知る人ぞ知る、正確無比で飛ばすことのできるゴルファーなのです。
ただ、5歳のときの交通事故が原因とされていますが、今でいう自閉症に陥ったのです。以来、極度の人間嫌いとなり、他人との協調ができない性格になったようです。このため勝てる試合でも、人前でのスピーチが嫌なために、18番で大叩きをして、順位を落とすということも度々だったそうです。そして特異な行動のために、理解者も少なく奇人扱いされていました。彼がもっと若いころに、スポンサードされていたり、良き助言者がいたなら、PGAツアーを席巻していただろうとさえ、言われているのです。
江連忠プロも21世紀のスイングと絶賛
ところが、今や彼のスイングの研究者は増え、アメリカのゴルフ専門誌、ゴルフダイジェストでも特集が組まれたくらいです。ページの大半を裂いたその特集は「他の誰もが知らないことを、モーは知っている」という衝撃的なものでした。中には21世紀のスイングという人さえいるくらい、もっとも世界を揺るがし、注目されているスイング論なのです。
その根拠は、人間の自然の動きに則った無理や無駄のない体の使い方によるものです。これはハンマー打法の開発者で、わたしが手ほどきを受けたジャック・カーケンダル氏のスイング論とまったく同じものなのです。そしてモー・ノーマンのスイングを科学的に分析し、理論構築したのがジャック・カーケンダル氏でもあるのです。
さらに彼のスイングが世界的に認められるようになったのも、タイトリスト社から生涯補助を受けられるようになったのも、カーケンダル氏の尽力によるものなのです。
「21世紀のグリップはパター型になるかもしれない。その見本はモーの握り方だ」というのは江連忠プロで、日本のゴルフダイジェスト誌上で、モー自身に聞いた話として、次のように言っています。
「左サイドには、フェース面を変えずにスイングをリードする役目を与える。そのためにできるだけクラブと左腕を一本の棒のようにして構える。右手がハンマーを持つときのように、手の平で深く握っているのは、肘から手首までをクラブと一体化させるようにして、リストの余計な動きを防いでいるから」と。そして「左手と右手は両サイドから、フェースからシャフトに至るラインをストレートに振れるように保たれている。シャフトのねじれをできるだけ出さないで振るイメージを持つ。左肘よりも右肘を内側のポジションに保って、左サイド主体でインパクトする意図を明確にする。とかく右腕を突っ張り、右サイド主体になりやすいアマチュアは、まずこの点を参考にすべきだ」さらに、クラブを鷲掴みで握る「ティンフィンガーのグリップは、飛ばない人、スライスする人は真似てもいい。クラブの長尺化に伴って、振り遅れのスライスやプッシュアウトに悩んでいる人は試す価値あり」と言っています。またモーは、グリップを体から遠く離して構えるが、「これも力のないアマチュアほど真似てほしい点。近くに立って体の回転でフラットに振るというのが、ツアーでは一種の流行になっているが、筋力のないものがやろうとすると、体が耐え切れず、上体が伸び上がってしまう。むしろ遠くに立ったほうが正確に振りやすい」と、モー・ノーマンのスイングがアマチュアの参考になる点が多いことを指摘しています。
左サイドは、フェース面を変えずにスイングをリードする役目。そのためにできるだけクラブと左腕を一本の棒のようにして構える。 グリップを体から遠く離して構える。筋肉の衰えた人や強くない人は、遠くに立った方がスイング軌道を正確に出しやすいと江連忠プロは言う。