レッスン書

POINT1

21世紀のスイングといわれる
ナチュラルスイングハンマー打法とはどんな打法

モー・ノーマン写真 ハンマーグリップ シンプル・イズ・ベスト。
単純化されたナチュラルスイングの原点は、
アドレスのワイドスタンスと超ハンドアップ、
それにハンマーグリップだ。

THE PERFECT NATURAL GOLF SWING

リー・トレビノをして“生きている伝説"と言わしめたモー・ノーマンの正確無比なスイング。独特なものながら、1971年以来OBを打ったことがないという正確性には驚かされる。ノーマンのスイングこそ、ナチュラルスイング・ハンマー打法そのものなのだ。

スイング写真
スイング写真

 パーフェクトナチュラルスイング。初めて耳にされた方も多いことだろう。以下、ナチュラルスイングと呼ぶが、このスイングは、従来のスイングのように、長年にわたる多くの経験的要素から割り出されたものではない。ナチュラルスイングとは、スイングそのものを科学的に立証し、よりシンプルで体に負担のかからないやさしいスイングというのが、最大の特徴なのだ。したがって、一度体に覚え込ませると、それほどの練習をしなくても、自転車に乗れるのと同じ理屈で、飛んで曲がらないスイングがいつでもできるということになる。

 ただ、これまでに教わってきたスイング論とは、かなり違う箇所が随所に出てくる。だから戸惑いもあるだろう。例えば、クラブは鷲掴みで握る。クラブのグリップを太くする。右手のリストは最大限利用する。アドレスでは体からクラブを思い切り離して、クラブと腕が一直線になるように構える。スタンスは肩幅以上。頭は動いても構わない。フォローなんて意識しないなど、数え上げればきりがない。それだけ従来の理論に慣れている人にとっては、ユニークさだけが強調され、違和感があることは否めない。しかし長年ゴルフをやっているのに、まったく上達しないという人は、一度頭を白紙に戻して、このナチュラルスイングを試みてみることだ。決してマイナスにはならないと思う。

 ナチュラルスイングとは、一口で言えば、従来の複雑なスイングを、科学的に分析し極めて単純化させたものだ。そしてこの「ザ・パーフェクト・ナチュラル・ゴルフ・スイング」の提唱者こそ、その分析に当たった物理学者ジャック・カーケンダルなのだ。彼は物理学者でありながら、プロゴルファーになることに熱い夢をはせていた。練習は1日平均5時間。それを2年間続けた。だが、結果は最悪のものであった。これでは何の意味もない。ほかにもっといい方法があるはず」と考え、従来のスイング指導法に大きな過ちがあることを発見した。つまりプロゴルファーは、球を打つ専門家ながら、スイング中に自分の体がどのように動いているかを知らない。スイング中の筋肉の収縮は、100分の1秒の世界であり、頭で感知することはできないものだ。したがって、動きを説明するには、自身の感覚に頼らざるを得ないことになる。しかもこの感覚というのが、かなりいい加減なものであるということは、衆知の事実なのだ。つまりプロゴルファーは科学者ではない。だからスイングを科学的に分析してレッスンすることはできないのだ。レッスンをしようとすれば、そのあやふやな自身の感覚に頼るか、あるいは先達の名手や先輩の教えをそのまま説明として伝えるだけになってしまう。そこに誤解が生じ、上達という結果の、出にくいことになってしまうのだ。

 そこで科学者であるJ・カーケンダルがスイングを分析して得られたスイングが、ナチュラル・スイングである「ハンマー打法」なのだ。ハンマーで釘を打つことが出来る人なら、だれでもゴルフクラブを使って、まっすぐに飛ばすことができるというものだ。従来のスイングは、アドレスしたときに腕とクラブの間に角度ができる。ところがインパクト時には、左腕とクラブは一直線に伸びている。ということは、アドレス時の角度は解けて、腕の動く面と、クラブの動く面との2面が存在することになる。それでいながら、スイングの平面はひとつ、つまりワンピーススイングであるべきだと説明されてきた。その誤解はさておき、それなら最初からワンピーススイングのできる構え方をすれば、無駄な動きを覚えなくてもよいというのが、彼の考え方なのだ。つまりアドレスでは、体から手を思い切り離して、飛球直線側から見て、腕とクラブが一直線になるように構える。これならスイングの平面は、最初から1つにしか描けない。これがハンマー打法の第1のポイントであると同時に、ナチュラルスイングの考え方でもあるのだ。

 このナチュラルスイングの具現者は、66歳になるカナダのモー・ノーマンだ。これまでに40を越えるコースレコードを樹立し、52勝を挙げ、ホールインワン17回、アルバトロス7回を数えるボールストライカーなのだ。このモー・ノーマンと肩を並べられるボールストライカーはベン・ホーガンただ1人と言われている。彼のエピソードについては、折りに触れて紹介するが、その正確度の高さからリー・トレビノはモー・ノーマンのことを“生きている伝説”と今なお呼んでいる。

 

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